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コラム

仮想通貨取引における留意点(1)-詐欺的な仮想通貨取引の勧誘にご注意を

吉井和明

投稿日

2017.07.21

投稿者

吉井 和明

カテゴリー

IT法務

その他の民事・家事事件

先日より、ビットコインの分裂に関する報道が出ており、世間を賑わせていますが、仮想通貨取引の注意点について、述べておきたいと思います。なお、今回は、SegWitの話ではありません。

法律上、仮想通貨についての定義を置いているものとしては、資金決済法があります(※1)。

資金決済法2条5項では、仮想通貨とは、簡単にいってしまうと、不特定の人から、物を買ったり、借りたり、なにかサービスの提供を受けたりするときに、その代金として支払うことができるもので、不特定の人との間で流通できる電子データで、サーバーとネットワークなどをつかって移転できるもの(各国の法定通貨、法定通貨建て資産を除く)が、原則的な仮想通貨です。なお、これと相互に交換できる、サーバーとネットワークなどをつかって移転できる電子データも仮想通貨です。

電子マネーと一般的に呼ばれている、前払式支払手段との一番の違いは、不特定の者との取引で使えることと、不特定の者との間で流通できることです。よくビットコインを引き合いにして出される、発行者がいるかどうかは、資金決済法の定義では問題にはなりませんし、最近の暗号通貨で共通で使われているブロックチェーン技術が必須というわけでもありません。

仮想通貨の法的な位置づけを考える上で難しいのが、現状で、法定されているのが、この資金決済法2条5項だけということです。※3

資金決済法に仮想通貨の条項を入れたのは、仮想通貨を取り扱っている取引所、法律でいえば、仮想通貨交換業に規制をかけることで、マネーロンダリング防止や、セキュリティ確保、取引所の利用者保護を図ることが目的で、仮想通貨の発行自体に制限をかけることはしていません。

その結果、無価値な仮想通貨の取引が横行する可能性が出てきます。

そもそも、無価値な仮想通貨を取扱うことは、まともな取引所であればしないと思われますが、仮想通貨の取引は、取引所を使わずに、直接行うこともできてしまうため、厄介です。

それに拍車をかけているのが、仮想通貨の定義が上記のとおり広範だということです。
すなわち、大雑把にいって
1.不特定の人との間で流通出来て
2.不特定の人から物を買ったりできて
3.サーバーとネットワークなどを使って移転できて
4.電子データ

である限り、資金決済法上の仮想通貨になってしまいますし、これを使った取引が詐欺になるなどということを除いて、仮想通貨を作り出しただけでは、違法でもなんでもないということから、技術さえあれば、仮想通貨などいくらでも作り出せてしまうということなのです。

特に、ビットコインの場合、ブロックチェーン技術はオープンソースとして公開されているため、類似の仮想通貨は技術が分かって実装できれば、いくらでも作れます。現に、アルトコインと言われるビットコイン類似の仮想通貨は、無数に存在しています。
(※4)

ただ、例えば、技術がビットコインと同じだったら、同じように儲かるという考えは全く間違っています。

もちろん、技術が高度になり、取引がスムーズに行えるほうが、利用はしやすくなるので、流通しやすくなり、価値が上がることはあるでしょう。

しかし、問題は、その仮想通貨が、現実に、取引に使えるかどうかが重要で、仮想通貨を購入する場合、そこを見失わないでいただきたいということです。

金貨は、皆が価値があると思い、商品の代価として使ったり、別の通貨と交換するだけの価値があると思うからこそ、通貨として流通することができました。そこには、金が希少であることと、国家が貨幣であることを裏付けることにより、流通が確保される見込みが高かったという背景があります。

要するに、価値があると思ってくれる人がほとんどいなくて、流通することもなく、どこでも利用することが出来ないような仮想通貨は、その辺の道端にある石と同じで、これは技術云々の問題ではないということです。

新興の仮想通貨でも、アイデア次第では、現行の仮想通貨と同じように、あるいはそれ以上に価値が上がるものはいずれ出てくるかもしれません。しかし、発行者のバックグラウンドがない後発の仮想通貨が価値を高めることは簡単なことではありません。

冒険するのもよいかもしれませんが、あなたが買った、その開発したばかりの仮想通貨は、単なるゴミかもしれないということをよく考え、流通する理由があるかをしっかりと検討していただくこと、仮に自分でそれを調べることができないのであれば、信頼のできる取引所で取引のできる仮想通貨だけを取扱うことをお勧めします。

もっとも、現状の仮想通貨は、価値が安定しているとはいえないため、全うな仮想通貨を購入する場合でも、取引にリスクを伴うことは、ご注意いただければと存じます。

※1 本記事作成当日(平成29年7月20日)時点で、改正法の内容を取り込んだ条文が「http://law.e-gov.go.jp」にアップロードされていませんが、「平成二十八年六月三日法律第六十二号 の未施行内容」から、改正内容は閲覧することが出来ます。以下では、本日までに施行された法律に従って、解説をします。

※2 資金決済法2条5項での「仮想通貨」の正式な定義は以下のとおりです。
一  物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二  不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

※3 なお、犯罪収益移転防止法で資金決済法2条5項を引いているので、この法律も、仮想通貨のことを定めているとはいえると思います。また、消費税法施行令9条4号において、仮想通貨の譲渡について非課税としていることも、法定の例とはいえるでしょう。

※4 様々なアルトコインを説明しているサイトとして、http://altcoins.com/