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コラム

孫の入学金、授業料納入に贈与税の課税はあるのか?

投稿日

2019.02.22

投稿者

永留 克記

カテゴリー

租税公課

離婚・夫婦や子どもに関する問題


私は、長女夫婦とその長男である孫と4人暮らしで同居しています。
孫は現在私立の中学に通っており、近々中学を卒業して高校進学をさせたいと考えております。
その場合、公立高校に入る場合もあるし、今通っている私立中学の持ちあがりで私立高校に進学することもあると思います。
とりわけ私立高校の場合、公立高校に比べて、やれ高い入学金だ、やれ授業料だと、長女夫婦には何かと物入りです。
そこで、同居している私としては、公立高校でも私立高校でも、孫が進学するときは長女夫婦に代わって、祖父である私がせめて入学金や授業料を支払って援助してやりたいと思っています。
こんな場合、孫や長女夫婦に贈与税がかかることはあるのでしょうか?

答え
民法上の贈与契約とは、当事者一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を示し、相手方がこれを受諾することによってその効力を生ずる契約をいいます(民法549条)。
要するに贈与は、甲が「(ある物)をタダであげる」と言って、相手方乙が「いただきます。」といって成立します。
甲と乙の間に、贈り物をする、贈り物を受けるという合意が成立して、甲から乙へある物の財産権が移転して、贈り物を受け取る乙(受贈者)が受ける財産的利益に贈与税が課税され、乙に納税義務が発生します。
しかしながら、相続税法第21条の3(贈与税の非課税財産)の規定があります。
「次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
 二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により
  取得した財産のうち通常必要と認められるもの」
というものです。
「贈与税の課税価格に算入しない。」というのは、贈与税が非課税となるということです。
したがって、相談者がお孫さんの年間の入学金や授業料を支払って、その金額が110万円を超えたとしても、相談者が「扶養義務者」であり、上記支払いが「生活費又は教育費に充てるためにした贈与」であり、「通常必要と認められるもの」と認められ、相続税法第21条の3第1項に定める「生活費」や「教育費」に当たるとされれば、贈与税の納付を心配することはありません。
相続税法でいう「扶養義務者」は、相続税法第1条の2で「配偶者」及び「民法第877条に規定する親族」であり、民法上の概念を借用しています。
相続税法の「扶養義務者」は、次のとおりとなります。
➀   配偶者、直系血族及び兄弟姉妹
➁   家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族
➂   三親等内の親族で生計を一にする者
 相談者と長女夫婦の長男とは、祖父と孫の関係にあり、「直系血族」になります。
 扶養義務者が、扶養義務に基づき、子どもや孫の必要最低限の生活費又は教育費を負担したとしても、子どもや孫について所得税はかかりません。
 また、扶養義務者相互間における扶養義務の範囲を超えた生活費又は教育費については、通常の社会常識の範囲で行われている限りは、贈与税は非課税となります。
 したがって、相談者も孫の年間の入学金や授業料を長女夫婦に代わって支払ってもたいていの場合は所得税も贈与税もかからないといって良いでしょう。
 ただし、長女夫婦が高収入であれば、その子供の口座に孫の教育費を振り込んでも、贈与税が非課税となりません。
 教育費は長女夫婦が自身の子に対する扶養義務として負担すべきであり、相談者が振り込んだ金は子又は孫に対する贈与とされてしまうからです。

 そして、相談者の孫の入学金や授業料の支払が「通常必要と認められるもの」に限るとされることです。
 「通常必要と認められるもの」とは、扶養する人と扶養される人の社会的、経済的地位等から考えて、通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい、教育費は、被扶養者の教育上必要と認められるもの、入学金、授業料はこれに当たると思われます。
 「通常必要と認められるもの」というのも、それぞれの家庭の生活水準や教育水準によっても異なるでしょうから判断も難しく、その家庭の生活水準を超えた必要以上に高額なものとならないように注意しましょう。

 せっかく相談者が孫の教育費にと言って渡した金を、長女夫婦が勝手に自分たち名義の預貯金にしたり、教育費以外の支出に使うなどした場合には、本当に「通常必要と認められるもの」なのかどうか疑われてしまいます。
 したがって、相談者は、入学金や授業料の相手先の口座に直接振り込むなどを行って、よけいな誤解を招かないようにした方が良いと思います。
                          以   上