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コラム

検索結果削除の基準(最三小判平成29年1月31日)について

吉井和明

投稿日

2017.02.02

投稿者

吉井 和明

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本日(ブログからの引用のため、この記載になっています。)、検索サービスにおける検索結果の仮処分に関する最高裁の判断がありました。

具体的な事案はさておくとして、最高裁の立てた基準と、基準を導くまでの筋道について、考えていきたいと思います。

1.最高裁の判断
 最高裁の判断は以下のとおりです。

「検索事業者による検索結果の提供について、検索事業者自身による表現行為という側面を有」し、また検索結果の提供がインターネット上の情報流通の基盤として大きな役割を果たしている。
削除は、「表現行為の制約であることはもとより、検索結果の提供を通じて果たされている役割に対する制約である>
「検索事業者が,ある者に関する条件による検索の求めに応じ,その者のプライバシーに属する事実を含む記事等が掲載されたウェブサイトのURL等情報を検索結果の一部として提供する行為が違法となるか否かは、…当該事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量して判断すべきもので,その結果,当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には,検索事業者に対し,当該URL等情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当」
判断要素としていくつか
2.検索事業者の立場
 これらの判断に関して、まず一つ重要なのは、最高裁が、検索事業者側が主張する、自分は「インターネット上の情報流通の媒介者」にすぎないという理屈も、原則元記事から削除すべきであるとする理屈もとらず、正面から検索結果を検索事業者の表現行為と認めたことが挙げられます。そして、表現行為の役割を重視する様は、報道、出版、放送とその役割の関係に近いようなものに感じられます。
 
 要するに、検索サービスの提供は、表現の自由の一環として検索業者が主体的になしていることを最高裁は認めたということです。

 そのように考えれば、検索サービスについては、比較衡量により判断されるものとはいえ、プロバイダがプロバイダ責任制限法3条により責任制限されるのとは異なり、責任の認められやすさからいえば、より報道、出版、放送などの従来のメディアに近い形で認められるようになる可能性はあるように思われました(検索事業者自体に表現の主体性を認める判断を行ったため、プロバイダよりも、不法行為責任が生ずる可能性も大きくなったように思われます)。

3.判断手法
 次に判断手法ですが、(1)「事実を公表されない法的利益と当該URL等情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量し」、(2)「当該事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合」に、削除を求めることができるという基準が示されました。

既に報道において、たくさんの方がおっしゃっていますが、問題は、(2)の事実を公表されない法的利益が優越することが「明らかな」場合です。

比較衡量は、二つの利益を天秤にかけ、どちらが優越するかを材料に判断を行う手法ですが、比較をすれば、結局は、どちらかが優越するという判断になるため、比較した時点では、どちらが優越かは明らかになります。その意味では、修辞的な文言と捉えることも可能ではないかと思います。

ただ、読み方としては、天秤に「明らか」という重りを先に載せておいたものと考えることもできます。すなわち、僅差の優越では、削除は認めないという考え方です。

 いずれにしても、比較衡量をメインとする判断であり、「明らか」の意味を明らかにする判例が出現するまでは、下級審は、「明らか」の解釈も含め、判断を積み重ねていくと思われ、今回の基準が明らかとなったことにより、検索結果削除の判断が十分に明確になったとは、到底言えない状態ではないかと思われます。

まだまだ、先は長そうです。