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弁護士法人 ALAW&GOODLOOP | 福岡・北九州・長崎の企業法務、法律顧問契約、法律相談

コラム

取引先の倒産に対する上手な対処法2 (債権回収の方法)

投稿日

2017.11.10

投稿者

川上修

カテゴリー

その他企業法務全般

1 はじめに

その1では、取引先に対する売掛金や貸付金(以下はまとめて「債権」といいます。)を守るための日ごろの管理方法について御紹介させていただきました。

その2では、実際に取引先の信用状態が悪化したときに、債権を回収するための上手な対処方法について御紹介します。

2 取引先に信用状態が悪化している兆候が見られたとき

取引先に信用状態悪化の兆候がみられたときは[1]、①債権の担保を強化すること②未回収の債権額を減少させることが重要になってきます。

取引先の支払猶予の要請に応じる代わりに連帯保証人などの新たな担保をつけてもらう、契約書を公正証書にして執行受諾文言を入れる、新規取引やサイトが長い手形取引を停止する、将来自己の債権と相殺をするために取引先に債務を負担しておく又はすでに負担している債務の支払いをしない(支払いの期限を延ばしてもらう)といった措置が考えられます。

3 取引先の信用状態の悪化が現実的になってきたとき

会社が倒産の危機に瀕したとき、会社財産が、一部の債権者や役員の親族・関係会社に流失してしまうことがあります。そこで、取引先の信用状態に懸念が生じたときに、まず考えなければいけないことは、取引先の財産を保全することです。

具体的には、銀行預金を差し押さえて払い戻しをできなくしたり、不動産の処分を禁止したりします[2]。ただし、このような手段をとると、銀行が、取引先に対して、一括返済を迫り、その結果、取引先の倒産の時期を早めてしまったということにもなりかねませんので、実施のタイミングについては十分に注意してください。

保全した財産に対し、現実に強制執行をかけるには、確定判決、執行受諾文言付公正証書など、債権の中身を公的に証明した文書(法律用語では「債務名義」といいます。)が必要となります。

債務名義を取得するためには、訴訟を提起して勝訴することが原則ですが、支払督促、少額訴訟[3]、民事調停といった訴訟よりも簡便な手続きも用意されていますので、まずは弁護士に御相談ください。なお、執行受諾文言付公正証書は、それ自体が債務名義となりますので、直ちに強制執行が可能です。

4 商品の引き揚げについて

納入業者の方から、代金をもらっていないので、納入した商品を引き揚げてもいいかという相談をよく受けますが、いったん納入した以上、商品の管理権は、特別の取決めがない限り、取引先に移転していますので、勝手に持ち出すと窃盗罪という犯罪に該当するおそれがあります。取引先が代金を支払ったかどうかは、原則として関係ありません。また、商品を引き揚げるために、取引先の店舗や倉庫に無断で立ち入れば、建造物侵入罪という別の犯罪に該当するおそれもあります。

商品を引き揚げるときは、取引先に契約解除の通知を送った上で、取引先の同意の下、穏当な方法により引き揚げをするようにしてください。

5 おわりに

その3では、実際に取引先が倒産してしまった場合の上手な対処方法を御紹介します。

以 上

[1]信用状態悪化の具体的な兆候については、「その1」を参照してください。

[2] このような手続きを民事保全といいます。

[3]ただし、60万円以下の債権に限ります。