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コラム

2021年(令和3年)は「うし年」、「うし年」はつまずく?

投稿日

2021.02.05

投稿者

永留 克記

カテゴリー

その他の民事・家事事件

債務整理・過払い金返還請求

債権の整理・回収

第1 今年は「うし年」、相場格言に「うし年は躓く(つまずく)」というのがあります。
  さて今年はどうかと言えば、結論から言えば、今年も「つまずき」はあると思います。
  過去の干支(えと)の「うし年」に何が起こったかと言えば、次のとおりです。
1 1973年(昭和48年) 石油ショック 原油高騰トイレットペーパー騒動
2 1985年(昭和60年) プラザ合意
3 1997年(平成8年)  東アジア通貨危機、
山一證券、北海道拓殖銀行等の
破たん
4 2009年(平成21年) 2008年リーマンショックの翌年ドバイショック
5 2021年      新型コロナウィルスバブル(?)の行方

第2 昭和48年石油ショックの年の思い出
前記第1の各年のうち、一番古い昭和48年についてお話します。
1 昭和48年(1973年)は、私が前年の昭和47年に大学の経済学部入試に失敗して、一浪し、受験勉強の途中、法曹を目指すことにして司法試験受験のため法学部へ志望を変更後受験して合格して大学法学部に入学した年です。
2 昭和48年(1973年)4月、私は晴れて大学の新入生、福岡市中央区六本松にある教養部で学生生活が始まりました。
  私は、入学早々から司法試験の受験準備を始めました。
  ただし、一つ気がかりなこと。
  すなわち、それは、前年昭和47年末ころ、アメリカ議会で木材やパルプなどの輸出を禁止する決議がされたとの新聞報道があったことです。
3 私は、次のことを連想しました。
  木材やパルプの輸出禁止→紙(ペーパー)の値上がり→本の値上がり→司法試験の受験勉強に使用する法律の本はどうなるのか?
  嵐にあって難破する船の中で最初に騒ぎ出すのは、どうも船の中に住むネズミだそうです。
ちっぽけな動物には危険を察知する動物の直感があるのかもしれません。
私はそのちっぽけなネズミみたいなもの。
4 ちっぽけなネズミの私が、物価上昇の危険を察知して、ない知恵を絞って、考え出した対処策が箱崎にある古本屋までリュックサックを背中にしょって法律の古本の買出しに行くこと。
  最初、六本松教養部授業がない土、日に行ったところ、どこの古本屋も休みで、平日に行かざるを得なかったのです。
  数少ない、平日午後一杯授業がない日を選んで、その日を古本の買出しにあてました。
  我妻民法講義のうち絶版になっていた物権法を除く、全冊購入、団藤重光の刑法綱要も総論、各論2冊も購入しました。
  法律の本は重たいので、リュックサックに入れても、1回では終わらず、目についた必要な本は出来る限り買いましたので、箱崎に行った回数も2,3回では済まなかったような記憶です。
  夏休みを終えて新学期に入るまでには、受験勉強の準備のうち、法律の本を買いそろえることだけは出来ました。
5 そして、その年昭和48年(1973年)10月を迎えて、石油ショックが起こりました。
  いつのまにか、スーパーからトイレットペーパーが消えるなどというウワサ、日本全国のスーパーに慌てた主婦が殺到して、トイレットペーパー購入に行列をつくる騒動に発展しました。
  生命保険外交員をして私と弟二人を大学まで行かせてくれた母親、当時長年の激務で体調を崩して、A型でも、B型でもない肝炎(当時は正体不明、現在はC型)で入院と自宅療養で休職し、やがて完全退職。
  母親がスーパーの行列に行けないことを悔しがっているのを、私は慰めるつもりで、母親に対し「世の中から一夜にしてトイレットペーパーがなくなるはずはない、誰かが買い占めている、買ったものを入れる倉庫にも限度がある、冬を過ぎて年明けの春には倉庫から出てくる」と言ったところ、母親いわく「そのときまで永留家のトイレはどうなるの?」
 私には、これに答える言葉がなく絶句したのを記憶しています。
  結局、もちろん心配していた本の値段も高騰し、その年昭和48年(1973年)の消費者物価指数は11.7%で1割を超えたそうです。
6 以上の背景について見てみます。
  多少さかのぼること2年、昭和46年(1971年)、ニクソンショック、その後世界中に基軸通貨ドルが過剰供給されました。
  そして、先進国では、穀物や木材など、いわゆる一次産品と言われるものの価格が高騰。
  昭和47年(1972年)7月、第1次田中角栄内閣発足。
  田中氏は日本列島改造論という本を出して、積極財政を打ち出して、上記の世界的なドルの過剰供給によるインフレーションに日本独自の拍車(ハクシャ)をかけてしまったのかもしれません。
  先進国の一次産品価格上昇も日本の輸入物価には現れてきていたかもしれませんが、輸入物価が消費者物価に反映されるのは、6か月から1年かかるので、昭和48年(1973年)春、難破船のネズミ私がリュックサックをしょって、箱崎と六本松を行き来していたころは嵐の前の静けさといったところ。
  当時、田中角栄氏の国民的人気は高く、昭和48年(1973年)から列島改造ブームと呼ばれる好景気によって、「今太閤」とか、「コンピューター付きブルドーザー」とか言われてもてはやされていたように記憶しています。
  そして、昭和48年(1973年)10月6日、第4次中東戦争が勃発、第1次石油ショックが起こります(当時の雰囲気、作家山崎豊子さんの小説「不毛地帯」にくわしい。)。
  その後の石油高騰によって一段と物価が上昇し、総合卸売物価指数は昭和48年(1973年)で15.6%、昭和49年(1974年)には実に31.4%上昇し、消費者物価指数は昭和48年(1973年)で11.7%、昭和49年(1974年)にはなんと23.2%上昇して、昭和49年(1974年)の物価上昇は「狂乱物価」と呼ばれました(命名は田中角栄氏のライバル福田赳夫氏)。
7 現在の状況はどうでしょうか?
  令和2年(2019年)2月23日日曜日、イタリアのベネチア・カーニバルが新型コロナウイルスの感染爆発を理由に突然イベント中止。
  その後、週明け令和2年(2019年)2月24日月曜日、世界で一番最初にマーケットが開くニューヨーク株式市場で空前の大暴落(本来、週明け最初に開くのは東京の株式取引市場、その月曜日は幸か不幸か連休でマーケット休み)。
それから3月にかけて世界の株式市場全体で大幅下落が続き(以下、「新型コロナウイルスショック」という。)、世界中でたくさんの人々が失業しました。
  世界で失われた雇用は世界人口78億人のうち4億人と言われています。
  そして、失われた世界のGDPは700兆円と言われ、その規模は、なんと日本の年間GDPの1.5倍の規模になるそうです。
  感染者の数は、最近の発表で1億人を超えたそうです。
  世界の死者数190万人を超えたと聞きましたが、今は既に200万人を超えているかもしれません。
  これに対し、アメリカの中央銀行FRB,ヨーロッパの中央銀行ECB、日本銀行など各国の中央銀行は「超」の字が付くような大規模な金融緩和政策を実施して、おびただしいドルなどの大量の通貨をマーケットに投入し、過剰な通貨が供給されました。
  「新型コロナ感染爆発」のような未曾有の世界的危機に対して、各国の中央銀行が上記の措置を執ったことはやむを得ない事と思います。
  これらの超金融緩和政策による過剰流動性のもと、日経平均株価は30年ぶりとも言われる高株価、ニューヨーク株式市場のダウやナスダック、その他、韓国、インド、ドイツなど各国の株式市場の株価は史上最高値を更新していると言われます。
  さらに、大豆などの世界の穀物市場でも価格が高騰しています。
これにはラニーニャ現象が発生して、産地が高温乾燥したため生育が悪いという天候要因も言われていますが、超金融緩和政策による過剰流動性により、穀物市場に投機資金が入ってきているとの専門家の指摘もあります。
  これらは、ちょっと、ニクソンショックから昭和48年(1973年)、昭和49年(1974年)にかけての過剰流動性に満たされた世界経済と似ているといえなくもありません。
昭和48年石油ショック、つづく昭和49年の狂乱物価を「昭和元禄バブル」と呼ぶならば、令和2年、3年のそれは、「新型コロナウイルスバブル」と言ってもおかしくありません。
8 今年のつまずきのタネ
  本年令和3年3月には、世界の社債市場では、700億ドル規模の大量償還を迎えるそうです。
  そのとき、ちゃんと借金を返済できない有名な企業が出てくると、世界中にデフォールトリスク懸念が広がりかねません。
  また、7月には、アメリカでは債務上限問題があります。
  アメリカ民主党は議会上院でも過半数を確保したと言われますが、ギリギリであり盤石ではなく、油断は出来ません。
  8月には、アメリカ長期国債10年物の大量償還が予定されています。これを無事に乗り切らなければなりません。
  10月には、世界的な国際的金融危機が発生することが多いとされています。
  そのほかにも、台湾リスク、トルコリスクなどこれからの1年において、つまずきのタネに事欠きません。
9 新型コロナウイルスショックがあったにもかかわらず、現在倒産は少ないといわれます(ただし、例外 飲食業、宿泊など観光産業など一部では倒産多発)。
  私に言わせれば、新型コロナウイルスショックがあったからこそ、倒産が少ないというのが正しいのではないかと思います。
  なぜなら、前記のとおり世界中、各国の中央銀行による超金融政策によって過剰流動性に満たされていて、たとえゾンビ企業でも、銀行が金を貸してくれる限りは、なかなか倒産はしないで済むようですから。
  それでも自分はつまずかないでも、取引先がつまずくことがあるかもしれません。
  そのときの債権回収は時機を失わないようにしなければなりません。
  そうかと言って、拙速にすると、自分が納品したものでも無理な債権回収をすると、窃盗罪の疑いを受ける危険があります。
  債権回収には、事前に弁護士に相談してアドバイスを受けるようにして下さい。
何かご質問やご相談があれば、当職所属事務所(電話093-967-1652)にお電話下さい。     以  上