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コラム

「そこまで言って委員会」の須田慎一郎先生の講演を聴いて

投稿日

2023.02.20

投稿者

永留 克記

カテゴリー

その他企業法務全般

遠賀町商工会 令和5年新春講演会 テーマ「コロナ収束後の日本経済」~ 中小企業はどのように動くべきか?

講師は、「そこまで言って委員会NP」でお馴染みのジャーナリスト

1 登壇早々、先生は、聴衆に対し、マスクを外して話をすることの許しを請われました。酸素不足で講演中に発声に支障が出ることの回避に配慮されたものです。

その後、先生は、コロナは突然変異を繰り返し、そのたびに感染力は強くなるものの、毒性は弱くなると確信的な言葉で言われました。

このご発言は、先生のジャーナリストとしての専門家医師や政府のコロナ関係者から得た取材経験に裏打ちされたものであり、非常に心強く、頼もしく感じました。

今や、欧米では、ウィズコロナが浸透し、人々もマスクをしないのが一般的になっているといった、先生の米国出張での経験などの紹介があり、今後も第8波、第9波は避けられないかもしれないが、重症化のおそれはだんだん解消していくであろうとの見通しを述べられました。

これらは、まず、今回の講演の前置きだと存じます。

ご自分でもおっしゃっていましたが、自分の講演は前置きが長いと言われるそうですが、ウィズコロナの定着は、今後の世界や日本の経済の動向を考えるには、必要な前提事項であると感じました。

2 その後、先生は、昨年末から本年にかけての岸田内閣の総合経済対策について述べられ、これが日本経済に与える良い影響は大きいと言われました。

上記対策は、総理記者会見によると、財政支出39兆円、事業規模で約72兆円、これによりGDP(国内総生産)を4.6%押し上げる効果があるとのことです。

また上記対策は、内容として、電気代の2割引き下げやガソリン価格の抑制など物価対策にも配慮されたものです。

3 先生の講演は、時間の関係で現在の物価上昇についてはあまり触れられなかったように感じます。

そこで、現在わかったところを述べることとしましょう。

まず日本銀行の予測をまとめると、消費者物価指数については、最近まで2022年度末の2023年3月末時点2.9%、一番新しい展望レポートによると、3.0%と修正されています。

日銀予測では、現在の物価上昇は一時的で、年明け2023年1月以降は海外からのコストプッシュ要因の押し上げ寄与が一巡していくため消費者物価の前年比は、来年度半ばにかけてプラス幅を縮小して2%を下回るとなっています。

黒田総裁は、日銀の利上げについて、日本経済のマイナスのデフレギャップを考慮すると、時期尚早と言われました。

確かに、原油などのエネルギー価格の国際相場は落ち着き、日本の輸入物価指数も、つい最近は鈍化してきているそうです。

今年2023年1月、2月は、前記の政府の総合経済対策の電気代やガソリン代の抑制効果も期待できます。

また、円安の効果もやわらいでくるとの専門家の声もあります。

ただ、円安については、昨年2022年1月から10月下旬まで続いた円安の影響は、半年くらいはあとを引くとも考えられことから、2023年の4月くらいまでは円安の影響は続くかもしれません。

さらに、帝国データーバンクによると、食品メーカー上場105社が昨年2022年中に値上げした食品数は2万品目を超えたようですが、今年2023年1月~4月なお値上げが予定されている食品数は7000品目を超えるとされています。

食品以外の輸入原材料や燃料の価格などについては、企業物価指数が、2022年1月9.1%だったものが12月には、10%を超えるまで上がってほぼ右肩上がりなのに対し、消費者物価指数が同年12月に4.0%にとどまっていることから見れば、その差は企業が負担し、一般消費者に転嫁できていないと思われます。

それでも、このところ、食品価格上昇を踏まえて、さすがに食品以外の原材料や燃料代の値上げを転嫁する動きが出てきているようです。

以上からすると、2023年1月以降、物価のプラス幅は縮小するという日銀や民間エコノミストの予測がそのとおりになるのかは心配です。

デフレギャップについても黒田総裁自身が「我が国の需給ギャップはマイナスの領域にありますが、先行き、潜在成長率を上回る成長経路をたどるもとで、今年度(2022年度)後半(同年10~12月、1~3月)にプラスに転じ、その後もプラス幅の緩やかな拡大が続くと予想されます。」と言われて、デフレギャップの解消は近いと感じました。

デフレギャップについて、内閣府は、日銀よりも見方が厳しいようであり、デフレギャップの金額は15兆円に昇ると言っているようです。

これに対し、岸田内閣の総合経済対策は、財政支出だけで、その2倍の30兆円を上回る39兆円であり、素人考えですが、この効果だけでデフレギャップは吹き飛んでしまうのではないか思います。

また、このところ話題の日銀のYCC政策ですが、2023年1月だけで日銀が買い占めた10年国債等は23兆円に昇ると発表されました。

日銀が投資家から国債を買い集める一方、その購入代金として23兆円もの巨額マネーがマーケットに注ぎ込まれたことになります。

これは、強烈な金融緩和効果を伴うものではないでしょうか?

私は、コラムでYCC政策は、長期金利という経済の鏡をゆがませて、価格発見機能を台無しにすると述べて反対と申し上げました(SNSの声に耳を傾けた黒田総裁、ときに市場の声にも耳を傾けて下さい。)。

最近、メガバンクのえらいさんだった方が、「債券相場は死んだ」とまでおっしゃったそうです。

YCC政策の弊害はあげだしたらキリがないほどですが、YCC政策によって「国債無制限買い入れ、指し値オペ」がなされて、巨額マネーがマーケットに注ぎ込まれて、せっかく落ち着いた円安の寝た子を起こしたり、輸入物価上昇に火を付けたりなどの弊害まで発生したら、日銀は、どうするのでしょうか?

日銀は、売り出し手形の売りオペでもやって、マネーを吸収していて、弊害発生を防止しているのでしょうか?

日銀は、インフレに火を付けたりはしないと信じています。

物価情勢については、しばらく目が離せないといったところです。

上記のとおりの物価上昇によって、相当数の大手企業は、ベースアップを含めた大幅な賃上げに応じるように思われます。

しかしながら、中小企業はなかなか大手のような賃上げは困難です。

中小企業が賃上げに応じるには、まず原材料等の値上げの転嫁が必要です。これは、大手の元請けさんや、商品の納入先の大手企業さんとの転嫁のための交渉になるので、相当困難です。

どうすれば、その交渉がなんとかなるのか、ご相談下さい。一緒にチエをしぼりましょう。

何かご質問があれば、当職所属事務所(電話093-967-1652)にお電話下さい。

以  上