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弁護士法人 ALAW&GOODLOOP | 福岡・北九州・長崎の企業法務、法律顧問契約、法律相談

コラム

クレプトマニア③

投稿日

2018.08.15

投稿者

関 五行

カテゴリー

刑事

弁護士の関です。

 今回もクレプトマニア(窃盗症や窃盗依存症ともいいます。以下では、「クレプトマニア」に統一します。)についての内容です。

 よく誤解されている方がいらっしゃいますが、クレプトマニアと診断された方が万引等の窃盗行為を行った場合であっても、基本的には無罪となるわけではありません。

 確かに、クレプトマニアであることが責任能力に影響を与えることを認めた裁判例は存在します。しかしながら、他方で、犯罪の成否自体については影響を与えず、あくまでも刑の量刑に関する事情(情状といいます)に限定して考慮されている事例も数多く存在しています。
 結局、クレプトマニアの方が窃盗行為を行った場合に、犯罪が成立するか否かはあくまでも当該事案の個別的要素(例えば、どの程度の症状であり、どういった治療を行っているのか等)によって判断されるものであり、一概に決まるものではありません。
 したがって、自らがクレプトマニアであるとの理由だけで、窃盗行為を行っても罪に問われないなどとは決して考えるべきではありません。実際、多くのクレプトマニアの方が、特に執行猶予中の再犯のケースでは、残念ながら有罪かつ実刑となり刑務所へ収容されています。
 私自身がこれまでクレプトマニアの方の窃盗事件を担当した場合を振り返ってみても、裁判では有罪であることは受け入れた上で、今後の再犯防止のため専門的医療機関で継続的治療を受ける必要性等を主張して、実刑は免れるよう(端的に言えば刑務所に収容しないよう)求めて行く場合の方が多いです。

 以前のコラムでも繰り返し述べていますが、クレプトマニアに該当するかどうかは専門的知識を有する医師にしか診断できません。自己判断やインターネット情報等で自分がクレプトマニアと断定することはもっての他ですし、そのために罪に問われないなどと絶対に考えてはなりません。

 やはりご自身に少しでも兆候があると感じた場合には、速やかに専門家の診断を仰ぎ、治療を開始することが重要です。最近は各地でクレプトマニアの自助グループ等も増えて来ておりますので、そういったところに参加してみてもいいかもしれません。