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弁護士法人 ALAW&GOODLOOP | 福岡・北九州・長崎の企業法務、法律顧問契約、法律相談

コラム

公益通報者保護法の改正について

投稿日

2020.10.16

投稿者

日髙 太一

カテゴリー

その他企業法務全般

今回の改正は、令和2年6月12日に公布されました。施行日は、この日から2年を超えない範囲内において政令で定める日とされています。現時点では、十分な準備期間を設けるために令和4年頃(2022年)が予定されています。

そもそも、公益通報者保護法は、公益通報者の保護を図るとともに、国民の利益保護にかかわる法令の規定の遵守を図ることで、国民生活の安定及び社会経済の健全な発展を目的とするものです。

この記事をご覧の皆さんも、報道等で様々な企業不祥事に接してきたことと思います。

元々、企業不祥事防止のため、会社法をはじめとして様々な法律が防止策を義務付けていますが、やはり万全ではありません。公益通報者保護法は、労働者(公務員を含みます。)が、公益通報者保護法に定める法律(刑法、金融商品取引法、個人情報保護法等)に掲げられている罪の犯罪行為等が生じ又は生じようとする場合に、そのことを通報した者を保護することを規定しています。

これまでは、公益通報をしたことを理由に解雇したり、不利益な取り扱いをしたりすることが禁止されてきました。

今回の改正においては、企業不祥の早期是正を図るため、以下の内容が追加されました。

① 公益通報体制整備義務・通報業務従事者指定義務

・事業者に対して、内部通報に適切に対応するために必要な体制の整備等を義務付けました

・行政措置(助言・指導、勧告及び勧告に従わない場合の公表)を導入しました

・内部調査等に従事する者に対して、通報者を特定する情報を守ることを義務付けました

② 通報者の拡大

現行法では、通報者は労働者に限られていました。改正法では、退職者(退職後1年以内)、役員を追加しました。

③ 通報対象事実の拡大

現行法では、保護される対象となる通報は、刑事罰の対象行為でした。改正法では、これを行政罰の対象行為まで拡大しました。

④ 通報要件の緩和、損害賠償の制限

現行法では、権限を有する行政機関に対する通報の条件として、信じるに足りる相当の理由がある場合の通報としていました。改正法では、通報対象事実が生じ又は生じようとしていると「思料」する通報者が、自らの氏名等を記載した書面を提出する場合を追加しました。

また、通報したことを理由として損害賠償を請求されることがないことを規定しました。

 

以上が、今回の主な改正の内容になります。

なお、令和3年には、指針や各種ガイドラインの作成が予定されていますので、発表されましたら、改めてご紹介致します。