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コラム

祭祀承継者に関する近時の裁判例より

投稿日

2021.12.03

投稿者

鷲見 賢一

カテゴリー

その他の民事・家事事件

遺言書作成・相続・財産管理

お墓や位牌などは,相続財産とは区別して祭祀財産と呼ばれます(遺骨も同じ扱いとなります。)。親族のなかで誰が引き継ぐかについても,相続とは別に考えられます。法律では,祭祀財産を継ぐ人のことを,祭祀承継者と言います。

では,祭祀承継者はどうやって決まるのでしょうか。民法では,まず,①亡くなった人が指定した場合には,指定された人が祭祀承継者となり,指定がない場合には,②慣習によって決まるとしています。そして,①②のいずれも存在しない場合は,③家庭裁判所が定めるとされています。

裁判所において祭祀承継者につき判示した比較的最近の裁判例として,東京高裁平成29年5月26日決定があります。この決定では,祭祀承継者の指定について「祭祀承継について推認される被相続人の意思,被相続人との親族関係,被相続人との生活関係上の交流の親密度,被相続人との親和性,祭祀承継の意思及び能力等を総合考慮して決めるべき」と示しました。そのうえで,具体的事案において,被相続人が望んでいた埋葬の方法に従った行動をしている親族を,祭祀承継者に指定しました。この決定では,先に掲げた他の要素についても検討をしていますが,就中,被相続人の意思について仔細に検討して結論を導いている点に特徴があるように思われます。この点は,これとは別の東京高裁平成18年4月19日決定でも,「被相続人と親密な生活関係・親和関係にあって,被相続人に対し上記のような心情(筆者注:死者に対する慕情,愛情,感謝の気持ちといった心情)を最も強く持ち,他方,被相続人からみれば,同人が生存していたのであれば,おそらく指定したであろう者をその承継者と定めるのが相当である。」と述べられているところです。

祭祀承継者の決定にあっては,故人との生前の関係だけでなく,故人がどのような意思を有していたかについても,裁判所は重視しているものと思われます。