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弁護士法人 ALAW&GOODLOOP | 福岡・北九州・長崎の企業法務、法律顧問契約、法律相談

コラム

自己株式の取得のためのミニ公開買付

投稿日

2022.07.08

投稿者

髙尾侍志

カテゴリー

その他企業法務全般

第1 はじめに

前回のコラムでは、自己株式の取得方法として、「特定株主からの取得手続」とすべての株主に売却の機会を与える方法(=ミニ公開買付)があるという話をさせていただきました。今回は、ミニ公開買付について、「特定株主からの取得手続」と対比しながらご説明いたします。

 

第2 「特定株主からの取得手続」と「ミニ公開買付」の相違点

1 序論

ミニ公開買付とは、すべての株主に株式売却の機会を与えるものです。そのため、「特定株主からの取得手続」と比べて株主間の公平を害する危険性が低いといえ、ミニ公開買付においては、「特定株主からの取得手続」と比べて簡便な手続によって、自己株式を取得することができます。

2 ミニ公開買付ができる会社

ミニ公開買付ができるのは非上場会社のみであり、上場会社はミニ公開買付を行うことはできません。

3 株主総会決議について

「特定株主からの取得手続」を行う場合には、株主総会の特別決議が必要となり(会社法309条2項2号)、決議要件が厳格なものとなります。一方、ミニ公開買付の場合には、株主総会の普通決議で足り(同法309条1項)、特定株主からの取得手続よりも要件が緩和されているといえます。

さらに、ミニ公開買付については、一定の要件を満たす会社は、この株主総会の権限を取締役会の権限とすることができます(同法459条)。

なお、ミニ公開買付において株主総会決議で定めるべき事項は以下のとおりです。

  • 取得する株式の数

※定めた株式数を超える申込があった場合には、各株主から按分して取得することとなります。

  • 1株の取得価格と取得価格の総額
  • 株式を取得することができる期間

 

4 売主追加請求の機会を確保する必要がないこと

前回のコラムで説明したように、「特定株主からの取得手続」においては、株主に対し、売主追加請求の機会を確保しなければなりません。しかし、ミニ公開買付においては、そもそも全株主に対し株式売却の機会を与えるものですから、売主追加請求の機会を確保する必要はありません。

 

第3 終わりに

今回は、ミニ公開買付の手続について「特定株主からの取得手続」と対比しながら説明いたしました。前回のコラムでも言及しましたが、自己株式取得手続には、今回説明した内容以外にも細かい手続等が必要となります。そのため、専門知識を有した専門家に相談のうえ実施することをお勧めします。

本コラムを最後までお読みいただきありがとうございました。

 

参考文献

伊藤靖史ほか『会社法』第5版 有斐閣 2021年

森・濱田松本法律事務所編『新・会社法実務問題シリーズ・2 株式・種類株式』第2版 中央経済社 2020年