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コラム

自然災害被災者債務整理ガイドラインについて

黒岩 英一

投稿日

2021.01.25

投稿者

黒岩 英一

カテゴリー

債務整理・過払い金返還請求

皆さんは、自然災害被災者債務整理ガイドラインをご存じでしょうか。

借金が返せなくなったときの対応として、通常は自己破産や任意整理、という手続きはご存じかと思います。
詳しい方は、個人再生手続きにも思い至るかもしれません。

今回ご紹介したいのは、債務整理の中でも「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」です。
この手続きは、自然災害に遭った被災者の方の債務整理について、「法的倒産手続によらずに、債権者と債務者の合意にもとづき、債務整理を行う際の準則」として取りまとめられたものです。
「被災者債務整理ガイドライン」ということで、「ガイドライン」というと、世の中にはたくさんのガイドラインがあるため、分かりやすく略して「被サロ」と呼ばれることもあります。

この被サロが作られたのは、例えば、住宅ローンを組んでいた被災者が、被災して家を失って新たに家を建てた場合など、ローンを二重で支払うような、被災者が再スタートに向けて困難に直面することを避けるためです。
災害救助法の適用を受けた自然災害に適用されます。
過去は、熊本地震などにおいて多く利用されましたし、今後も災害救助法の適用を受ける自然災害においては利用されるでしょう。

この被サロですが、メリットとして、①手続きの支援を無料で受けられる、②自己破産などの法的手続きよりも多くの財産を手元に残せる可能性がある、③信用情報に登録されない(いわゆる「ブラック」とはならない。)、というメリットがあります(申出前に滞納になっている場合には別です。)。
一方で、対象となるのは個人のみで法人は対象にならず、手続きの最初の同意の取付や、弁護士会への手続着手の申出は債務者が行う必要があるほか、災害によって返済が難しくなったといえなければならない、などの要件(災害起因性)もあります。

この被サロですが、令和2年10月30日、新型コロナウイルス感染症もその対象となることが決まり、令和2年12月1日から、適用が開始されました。
報道はされましたが、大きなものとは言い難いものでしたので、ご存じでない方も多いかと思います。
新型コロナウイルス感染症も自然災害の1つとして捉え、被災者の再スタートを後押しするための対応です。

新型コロナウイルス感染症の社会に対する影響は極めて大きく、これによって債務の返済が難しくなった方も多くおられると思いますが、一定の要件を満たすなら、この被サロの利用で、自己破産手続よりも有利な条件で債務整理ができる可能性は高いので、もし債務整理を検討中であれば、利用を検討されてみてください。
もし手続を進めた結果、被サロの適用が難しいという場合であっても、法的な債務整理手続を利用することができなくなるわけではないので、新型コロナウイルス感染症の影響で債務の支払が難しくなったような事情が少しでもあるなら、利用を検討してみることをお勧めします。
下にホームページのリンクを貼っておきます。
ホームページなどを見ても被サロがよく分からないような場合や、債権者に申し出ても、手続着手の申出のための同意書をもらえないような場合には、最寄りの弁護士会に直接相談されてください。
                                                                                    以上

自然災害債務整理ガイドラインに関するHP