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弁護士法人 ALAW&GOODLOOP | 福岡・北九州・長崎の企業法務、法律顧問契約、法律相談

コラム

消滅時効のお話し

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投稿日

2015.06.23

投稿者

平井 章悟

カテゴリー

キーワード

労基法

消滅時効

弁護士の平井です。

弁護士が法律相談や事件を進めていく上で特に気に掛けるものの一つに消滅時効があります。今回はこの消滅時効についてお話ししたいと思います。

消滅時効とは、権利が行使されていないという事実状態を尊重して、一定期間の経過により、権利そのものを消滅させてしまうという法制度です。
ここでまず注意が必要なのは、この消滅時効というのは、一定期間の経過により当然に権利が消滅してしまうのではなく、消滅時効により利益を受ける人が、援用、すなわち「消滅時効を主張します。」という意思を表示して初めてその効果が生じるということです。
では、どれだけの期間が経過すれば、時効は完成するのでしょうか。ここが一番注意が必要な点です。なぜなら、下記のとおり、権利ごとに時効期間が異なるからです。

時効期間は法律で定められており、民事上の債権は原則として10年(民法167条1項)、商事上の債権は原則として5年(商法522条)とされています。
また、短期間で消滅する時効については、不法行為による損害賠償請求権は3年間、請負代金債権については3年、労働者(ごく短期の契約の場合は除く)の給与請求権は2年、家賃は2年、旅館や飲食店の代金は1年といった具合に、種類毎に細かく期間定められているのです。

もっとも、民法の改正により、職業別の短期消滅時効が廃止されることになり、請負債権や家賃、旅館や飲食店の代金等の時効期間は5年に統一される見込みです。
ただ、労働者の給与請求権については、前述の改正によっても、労働基準法115条で、「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。)、災害補償その他の請求権は二年間、この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。」と定められているため、2年で消滅時効が完成することになります。

しかし、労働基準法115条がこのまま維持されるか否かは不透明なところではありますが、民法の改正に合わせ、前述の債権と同様に時効期間が5年になるということになれば、残業代請求等、弁護士実務において多大な影響が生じることになると考えられます。