1.今回はストーカー規制法違反についてまとめてみようと思います。
正式名称は「ストーカー行為等の規制等に関する法律」です。名前の通り、ストーカー行為を「規制」しようという目的の法律です。略称は「ストーカー規制法」とされることが多く、表題でもそのように記載しています。
2.ストーカー規制法ですが、その規制対象となる行為が、次のように定められています(同法第2条第1項柱書き)。
①特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、②当該特定の者又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、③次の各号のいずれかに掲げる行為
①で分かるように、目的に恋愛感情やそれに基づく怨恨の情がないと、その対象になりません。このため、恋愛感情に基づかずに恨みをもってつきまとい行為をしても、ストーカー規制法による規制は受けないこととなります(迷惑防止条例違反などはあり得ます。)。
②は、対象者だけでなく、その関係者に対する行為も規制する、というものです。対象者の家族に嫌がらせをするような場合などが考えられます。勤務先の関係者もこれに当たり得ます。
③は、対象が少なかったことで規制できず事件になることもあったため、徐々にその対象が広がってきていて、非常に多岐にわたります(同条第1項第1~8号)。なお、SNSを通じて連絡をする行為も、その規制対象となりました(同条第2項)。
一 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他その現に所在する場所若しくは通常所在する場所(以下「住居等」という。)の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
二 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
三 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。
四 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
五 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、文書を送付し、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
六 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
七 その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
八 その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し若しくはその知り得る状態に置くこと。
3.最近対象行為に加えられたのが、GPSによる位置情報取得、対象者のいる場所の見張りやうろつき、文書を何度も送る行為です(令和3年6月15日施行)。
このうちGPSによる位置情報の取得は、興信所(いわゆる探偵)の一般的な追跡方法ですので、ストーカー規制法違反となる可能性が出てくるようになりました。
例えば、夫婦の一方が、他方の浮気を疑って興信所に依頼してGPSで追跡する行為が対象となります。
4.罰則等
個人でストーカー規制法違反に当たる行為をしても、悪質性が低ければ、いきなり逮捕等されることは多くありません。警察でも、まず加害者に電話をするなどして注意し、それで加害者の目が覚めて終わることも多いようです。
一方で、悪質と判断されると、いきなり逮捕されることもあり得ます。
逮捕まではいかないまでも、問題と判断されると、禁止命令が出されることもあります(同法第5条)。禁止命令が出てもストーカー行為をすると、行為によっては適用される罰則の上限が2倍になるほか(同法第19条。一年以下の懲役又は百万円以下の罰金→二年以下の懲役又は二百万円以下の罰金)、禁止命令違反というだけでの罰則を受けることもあります(同法20条。六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金)。
5.まとめ
(1)つきまとい行為をされたら
つきまといの被害を受けているような方は、つきまとい行為を放置しておくとエスカレートする傾向がありますので、まずは警察に相談された方が良いです。
相手方を刺激することを心配する方もおられますが、大体の場合、警察から注意の電話がいくと、それで正気に戻って、同様の行為が止まることは十分にあり得るからです。仮にそれでつきまとい行為が止まらない場合、より厳しい処分を求めていくことで対応もできます。
(2)つきまとい行為を疑われたら
つきまとい行為を疑われたという相談を受けることもありますが、それが警察から口頭で簡単な注意を受けたというだけなら、同じことを繰り返さない限りそれで終わることも多いので、逮捕などを心配する必要は小さいです。ただ、疑われる行為はできるだけ控えた方が安全です。
禁止命令を出された場合、その有効性を争うこともできはしますが、費用対効果に見合わないので、まったくお勧めはできません。
いずれの立場での相談も対応できますので、ストーカー規制法違反について心配なことがあれば、当事務所へご相談ください。
以上