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コラム

トランプの相互関税90日間停止の突然の発表の背景、2025年4月17日 (トランプを震え上がらせたのは何か?)

投稿日

2025.04.25

投稿者

永留 克記

カテゴリー

経済

通常、株価が急落したとき、びっくりした投資家は、リスク資産の持ち株を売り払って、その金で安全資産といわれる米国国債や金(ゴールド)を買おうとする。このとき米国国債金利は低下し、金価格は上昇する。これを「質への逃避」(FRY TO QUALITY)という。

米国トランプ大統領が4月2日相互関税の詳細を発表後、世界同時株安、ドル通貨安、4月2日から4月4日までの3日間は、教科書どおりに株価下落に不安を感じた投資家が株式を売って国債を買う=金利が低下する動きが起きていた。

ところが4月7日以降、奇妙なことが起きていた。株価が急落する局面にあるにもかかわらず国債が売られ、金利が上昇していたのである。この金利上昇は4月9日の相互関税発動の前に一段と進み、10年ものの米国債の金利は一時、4.5%を超えた。

このような中、4月10日、9日に発動されたばかりの相互関税を、報復関税をしなかった国々に限って90日間停止することが突然発表された。

まず、なぜ株価急落局面で国債が売られたのか? 債券市場では、中国がトランプ関税の報復のため、手持ちの米国国債をたたき売っているなどのウワサ。また、株価急落で、恐怖指数上昇して、担保の米国国債の担保価値が下がり、追加担保(いわゆる追証、英語でマージン・コール)を要求された、巨額損失を抱えた某ヘッジファンドがその損失穴埋めに、保有国債を換金売り、ほぼ投げ売りを行ったという話もある。

テレビ東京モーサテのパックンの説明によると、債券市場で安全資産として信用されてきた米国国債が投資家たちから保有自体を不安がられるようになったのかもしれないとのこと。

金融界の重鎮JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEOもトランプの関税政策について、4月7日には株主に宛てた手紙の中で、「新しい関税政策には多くの不確実性がある」としたうえで同盟国との経済的な分断は、長期的には悲惨な結果をもたらす可能性があると指摘。

そして、4月9日水曜日の朝、ダイモンCEOは、トランプ大統領お気に入りのFOXビジネスでのインタビューに答え、「私は冷静に見ているが、状況は悪化する可能性がある」と述べたとのこと。ちなみに、ダイモンCEOのテレビ出演の数時間後、トランプ大統領は相互関税の90日間停止を発表した。

どうして、債券市場は、米国国債金利の上昇(債券価格は下落)を恐れるのか? 米国の大手銀行などの機関投資家は、大量の米国国債を保有していて、金利上昇(債券価格下落)があると、保有国債に評価損が発生して財務状況が悪化する。また株価急落でビックス指数(恐怖指数)が上がると、担保になっている米国国債の担保価値が低下して、担保不足となって、貸し手の金融機関から追加担保を要求され、これに応じることが出来ないと最悪の場合、その機関投資家の破綻につながる。

最近の例では、シリコンバレー銀行破綻。古い話では、当時の橋本総理が、米国国債を売りたい衝動にかられるとジョークを言ったことで米国国債金利が急上昇(債券価格急落)して、ニューヨーク・ダウ平均株価が暴落したことなど。

ちなみに、4月11日17時(午後5時)05分、米国国債10年金利の終値は、年利回り 4.497%に至る。

元FRB総裁や財務長官をしたイエレン氏は、4月14日、某テレビ局に対し、株売り、通貨ドル売り、米国国債の利回り上昇(価格下落)(いわゆるトリプル安)について、異常だとし、投資家がドル建て資産を敬遠し始め、世界の金融システムの基盤である米国債の安全性に疑問を投げかけているとして「非常に憂慮すべき」と答えて、パックンの説明を裏付けている。

トランプ大統領は、自分の高率関税の発表に対し、株価が急落しても動じる様子を見せなかったが、以上の米国債券市場から自分に突き付けられた罰点マークには震え上がったのかもしれない(もちろん本人は認めないだろう)。

他人を脅してばかりのトランプ大統領もときには震え上がることもある。

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                             以  上