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コラム

アンソロピックAIの脅威と中小企業「お百度参りでもしてもらわんば」事件

投稿日

2026.02.25

投稿者

永留 克記

カテゴリー

経済

キーワード

AI

経営

 このところ物騒なニュースが飛び込んできている。
 2026年2月6日のテレビ東京番組のWBSで「先週末から4日間でハイテク株が4%大幅下落 2月5日には主要3指数(ニューヨーク・ダウ、ナスダック、S&P)が下落、 アンソロピックが金融関連業務を自動化」という新サービス発表報道、AIがソフトウエア企業の業務ソフトに置き換わるという懸念で代表的なソフトウエア企業であるセールスフォースなどの株価が大幅安となったというものである。
 さらに、同年2月13日の日経新聞では、アンソロピックについて、AIがソフトウエア企業の業務ソフトの事業モデルを崩す「SAASの死」の震源、直近1年の売上高や企業価値の増加率は、米国オープンAIを上回る、法人向けAI市場の主役に躍り出たとまで書いている。
 この上記のWBSの番組コメンテーターの説明がわかりやすかったので紹介する。
 すなわち、従来のソフトウエア企業のサービスは、顧客企業の相談相手の役割、人間である顧客企業の関係者が具体的な質問をし、これに対してAIが回答、その回答を人間が読んで作業する、このような流れ。
 これに対し、アンソロピックの「クロード・コワーク」は、資料作成や表計算ソフト「エクセル」のデータ分析を自動化したもので、ユーザーに代わってパソコン上のファイルを操作して、事務作業や資料作成を自律的に実行するAIエージェント機能を有するものであって、前記コメンテータによると、「こういうことをしたい」とふわっとした目標を与えるとAIが自律的に作業し、そのなかで問題が出てきても自己解決してくれる存在、これは従前の単なる顧客企業の相談相手ではなくて、一種の仕事仲間、現場での仕事を一部人間に代わって分担してくれる存在というのだそうである。
 しかしながら、このような新機能は、AI人材の豊富な大企業では機能したとしても、AI人材など全くいない中小企業でも通用するのであろうか?
 私がずいぶん以前に担当した事件で私が勝手に「お百度参りでもしてもらわんば」事件と名付けた事件を思い出す。
 当時、パソコンが仕事の現場に入ってきたばかりの時代で、ある中小企業の社長が、あるセールスマンにパソコンを売り込まれて、パソコンなど全くわからんと言うと、そのセールスマンからパソコン操作は、自分が会社に来て何度でも指導するからと言われてクレジット利用での購入を決めた、そのときその社長が言った言葉が「(パソコン操作指導にための会社訪問を)それこそお百度参りでもしてもらわんば」と言ったそうである。
 結局、その会社では、買ったばかりのパソコンをどう会社の仕事に取り入れていいのかわからず、宝の持ち腐れとなって、クレジット代金を支払わなかったことから事件となったものである。
 資料作成やエクセルの分析など、どこの企業でも、ある程度定型化された作業であれば、格別、現実の中小企業では、業種特有の作業の方法、業種どころか、その中小企業特有の仕事のやり方など個別事情が違ってくれば、作業の方法でのAI機能も違ってこざるを得ないのではなかろうか?
 本当に「こういうことをしたい」という漠然とした目標、特殊な前提条件の存在を無視した目標などをAIに与えただけで問題が出たときは自己解決して一定の回答をAIが出すことが出来るのであろうか?
 仮に、漠然とした目標設定によって、AIエージェント機能なるもので、期待した成果が出なかったときは、どうしてそうなったかを検証しなければならない。人間ならば、顧客企業の質問があまりにも漠然としたもので、適切でなかった場合、質問の趣旨がわからんと言って回答拒否、しかしながら、質問が漠然として、当然予想される前提条件の存在も無視した、適切でない質問であっても、AIであれば、それなりのもっともらしい回答をひねり出して回答することもあるのではないか?そうすると、AIに対して、どんな質問をしたのか、現実にどんな問題が生じて、AIがどういうふうに自己解決したのかもわからないのであれば検証にならないのではないか?
 アンソロピックの新サービスもAI人材豊富な大企業であれば通用し、頼もしい仕事仲間になるのであろうが、従来のソフトウエア企業も、それこそ「お百度参り」の指導をすることを覚悟して、個別企業の個別事情を考慮して、AI導入を図れば、新サービスをAIの脅威と恐れることはない。