弁護士の関です。
突然ですが、皆様はクレプトマニアという言葉をご存知でしょうか。
クレプトマニアとは、その輪郭・定義が必ずしも明確ではありませんが、常習的な万引き・窃盗行為を主症状とする精神障害とされます。窃盗症や窃盗癖とも呼ばれます(精神科医療機関を受診した常習的窃盗行為を有する患者群の報告・竹村道夫他)。
罹患した方と実際に接しないとあまりイメージできないかもしれませんが、クレプトマニアの方は本当に考えられないような窃盗行為をひたすらに繰り返します。文献でも、「例えば治療を受けていないクレプトマニア患者は、裁判進行中、判決の直後、判決が出てそれが確定する前、公判に出廷するための道中、仮釈放中の満期直前などに窃盗をします。窃盗行為以外の点では反社会的な傾向や犯罪傾向などないのに、このような最悪のタイミングで、常識人では考えられないような危険を冒して、小額の万引きのようなばかげた再犯をします」とされています(窃盗癖の臨床と弁護について・竹村道夫)。
あくまで偶然ではありますが、私は弁護士になって以来、クレプトマニア関連の事件に関わることが多く、上述した論文の著者であり、日本におけるクレプトマニア治療の第一人者である竹村道夫医師とも何度か面談する機会をいただきました。
勿論、私は学者ではありませんので専門的、医学的なことなど全く分かりませんが、一つだけ確実に実感を持って言えるのは、クレプトマニアは専門的な治療を継続的に受けなければ治ることはありません(正確には、症状の寛解はあるものの、完治はほぼないそうです)。
クレプトマニアは本当に辛い病気です。ときには患者本人ばかりかその家庭まで破壊し、家族を奈落の底まで叩き落とす本当に恐ろしい病気です。しかし、自分や周囲をそのような状態にしても、本人はどうすることもできずただ窃盗行為を繰り返すのです。
ご自分や身の回りの方に、少しでもクレプトマニアの兆候がある場合には、迷わずお近くの専門医療機関等を受診することを強くお勧めさせていただきます。
以上