弁護士の永留です。さて確定申告の後、会社や個人の中には、税務調査を受けることがあります。エピソードが一つ、あるA会社での税務調査の際、担当税務署員が事務所内にあった金庫を開けるように言ったとき、A社長が拒否したとのことです(税務調査の上手な受け方・おさめ方、岩崎彰著、日本実業出版社23頁)。
なぜ、A社長は拒否したのか?
A社長によると、「金庫内には不動産売買契約書が多数あり、これに印紙を貼りつけていないものが相当数あったから」とのことです(同書24頁)。
税務調査において、印紙税調査は、税務署員が必ずと言っていいほど目をつけている調査項目だと思います。
なぜなら、印紙税の調査は、課税文書に印紙が貼ってあるかどうかを確認するだけで調査目的が達せられるからです。
税務調査のポイント
税務調査のポイントは、課税文書の範囲と印紙の貼付(「ちょうふ」と読みます。)、および消印がされているかどうかということになります。
印紙税の調査は、課税文書としての課税物件の範囲とその税額、課税物件に該当した場合には、作成と同時に適正な税額の印紙の貼付と消印がされているかどうかが調査されます。
そして、不動産に関する契約書は、印紙税の課税文書の代表例です(印紙税法の「課税物件表」の1号)。
印紙税は、課税文書の作成時までに、定められた印紙を貼りつけ消印する方法で納付するのが原則です。
ですから、税務調査に来た担当税務署員に印紙が貼られていない課税文書や貼られていたとしても消印がされていない課税文書を見つけられたときはアウト。
忘れていました、これから貼りますというわけにはいかない。
やはり、印紙が貼られていないときは、印紙税を納付しなかった場合として、印紙税額とその2倍に相当する金額との合計額(いわば3倍増し金額とでも言おうか)を、原則として、過怠税として徴収されることは避けられないでしょう(例外的に軽減される場合はあります。)。
ちなみに弁護士個人が依頼者に渡す、着手金や報酬の領収証は非課税文書であり、印紙を貼っていなくても過怠税をとられることはありません(国税庁ホームページ、印紙税の手引き、平成26年9月)。