共有とは、共同所有の一形態であり、複数の者が同一物の所有権を量的に分有することをいいます。民法249条以下に規定があります。
収益不動産についても様々な理由から、共有となっていることがあります。
例えば、ビルの建設にあたって買収に応じない地主がいる場合に、その地主にビルの共有者という形で残ってもらい、ビル建設をすすめるような場合です。
具体的な管理運営についてですが、共有者の一人がビルの管理運営を行い、他の共有者は賃料収入等収益の分配を受けるのみという場合もあろうかと思います。この場合、管理運営を行う共有者においては、ビルの管理運営業務を現実に行う以上は、他の共有者よりも多くの収益分配を受けたいと考えるのが当然ということになります。他方、管理運営を行わない共有者においては、管理運営を行う共有者が不適切な管理運営を行っていないかをチェックしたいと考えることになります。
また、不動産管理会社にビルの管理運営を委託し、共有者全員がビルの管理運営を行わず、賃料等収益の分配を受けるという場合もあると思います。しかし、この場合でも、不動産管理会社限りでビルの管理運営に関する判断を行えない場合が多く、したがって、共有者間で、管理運営についての協議を行う必要が生じ、管理運営につきタイムリーに判断を下すことができないという問題があります。また、不動産管理会社に委託する事項が多くなれば、不動産管理会社に支払う報酬も大きくなります。
いずれにしても、共有者間で、あらかじめ、当該ビルの管理運営に関し詳細な取り決めをしておくことが重要です。
共有から離脱したいと考える共有者があらわれる可能性もあります。もちろん、共有持分譲渡を制限する特約(他の共有者の承諾がなければ譲渡できない、譲渡する場合には他の共有者とまず協議しなければならない、など)を設けておくことはありますが、このような特約がある場合でも、かかる特約に違反してなされた譲渡自体は有効です。特約違反による債務不履行責任(損害賠償など)が問題となるにすぎません。ただし、民法上の組合契約(民法667条)があるといえる場合には、持分譲渡をしても、それを他の共有者に対抗することができません。
また、相続により収益不動産が共有となる場合もあると思います。遺産分割協議が成立するまでの賃料は各相続人が取得するものです。すなわち、①相続開始から遺産分割までの間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生じる賃料債権は、遺産とは別個の財産であって、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものであり、②各共同相続人が相続分に応じて賃料債権を確定的に取得することは、後になされた遺産分割の遡及効による影響を受けない、とされます。
弁護士 植木 博路