Q 民法(債権法)が約120年ぶりに一部改正されると聞きました。事業者に関係がありそうな改正点について教えてください。
A
1 民法の一部を改正する法律の概要
現行民法は約120年前である明治29年(1896年)に制定されましたが、その後、取引の複雑化、高齢化、情報社会の進展など、社会経済構造は大きく変化しました。
このような社会構造の変化に対応して、様々な判例や解釈が生み出されましたが、明文の規定がないため、基本ルールが見えにくいという問題点がありました。
そのため、平成21年から法制審議会民法部会において審議が続けられ、平成29年5月26日、民法の一部を改正する法律が成立しました。施行日は、平成32年4月1日となっています。
以下、今回の改正点のうち、特に事業者に関係がありそうな消滅時効、法定利率、連帯保証について説明します。
2 消滅時効の改正点
これまでは、個人間の貸し借りなど民事債権についての消滅時効は10年、会社間の取引など商事債権についての消滅時効は5年など、当事者の職業や債権の性質によって消滅時効が完成する期間が異なっていましたが、民法の一部を改正する法律では、消滅時効は、原則として、権利を行使することができることを知ったとき(主観的起算点)から5年、または、権利を行使することができるとき(客観的起算点)から10年のいずれか先に到来する方に完成するとされました。
例えば、人にお金を貸したケースでは、貸主が、返済期日の翌日から5年間、借主に貸金の返済を請求しなければ消滅時効が完成することになります。なお、貸主が、返済期日を知らないというケースは考えにくいため、ほとんどのケースでは返済期日の翌日から5年で消滅時効が完成することになると考えられます。
ただし、不法行為に基づく損害賠償請求権については、生命身体の侵害によるものは主観的起算点から5年、または、客観的起算点から20年、それ以外のものは主観的起算点から3年、または、客観的起算点から20年とされています。
3 法定利率の改正点
当事者間で利率の定めがない場合に適用される法定利率は、民事法定利率が年5%、商事法定利率が年6%と規定されていましたが、市中金利が著しく低い現状との乖離が問題視されていました。
そのため、今回の改正により、法定利率を年3%に引き下げ、かつ、将来の金利動向に合わせて変動させられるようになりました。
4 連帯保証債務について
民法の一部を改正する法律は、安易に第三者が連帯保証人となってしまう被害を防ぐために、個人が事業用融資の保証人になろうとする場合については、公証人による保証意思の確認を必要としました。
ただし、主債務者が法人である場合の取締役や主要株主など、また主債務者が個人である場合の共同事業者などには適用はないとされていますので、注意が必要です。