弁護士の黒岩です。
今回は労働審判手続きについて書きたいと思います。
1.労働審判は、2006年4月から運用が開始された、他の手続きからすると、かなり新しい手続きです。
対象は個別労働関係民事紛争に限られています(労働審判法1条)。
一番の特徴は、原則として3回で終結するため、速やかな解決が望めることです。
2.手続き
裁判における訴状のような形式で申立書を作成しますが、3回の期日は事実確認のほか、話し合いでの解決が図れないかという調整も行われます。
期日においては、裁判官と労働審判委員2名(労働者側、使用者側各1名)の前で、対席で話をしていくことが多いです。
3回の期日の中で調整ができないときには、審判が出されます。審判に異議がある場合、異議申立てが可能で、異議申立をすると、審判の効力は失われ、通常の訴訟手続きに移行します。(労働審判申立時の印紙代は、訴訟手続きの半額となるため、通常訴訟移行時にはもう半分の印紙代を納付する必要が生じます。)
3.労働審判の概況
統計によると平均審理期間は約70日、70%は調停が成立して終了し、残りの半分17%ほどは審判が出され、そのうち約7%で異議が出されずに確定します。
まとめると、統計上事件の77%は、3回の期日で終結するということになるため、短期間で終結し、非常に高い解決率であるといえます(通常の民事訴訟の判決までの平均期間は全体で9ヶ月を超え、労働事件においては14ヶ月という統計が出ています。)。
裁判の迅速化に係る検証に関する報告書
ただし、結論としては金銭を一定額支払って終結となることが多いため、職場に戻りたいなどの意向がある場合には、通常の訴訟手続きを選択した方が良いかもしれません。
多くは労働者側が申立てを行うのですが、申立人は準備をした上で申立てをする一方、事実確認や証拠収集にかけられる時間が十分に取れないため、労働審判の申立書が届くと、相手方となる雇用主側は、早急に対応を行う必要があります。
雇用主側としては、短期間で証拠収集を行う必要があるほか、労働審判期日にも対応しなければならず、負担が大きいように思われますが(実際に負担が小さくはありませんが)、金銭解決の目処が付きやすいというのは、適切な言い方でないかもしれませんが、「金で片が付く」というメリットもあります。
4.労働審判が苦手とするもの
労働審判手続きは、このように良い面が多数あるのですが、一方で事実関係に深い対立があると3回の期日では調整が図れない可能性が大きくなるので、そのような場合には最初から訴訟手続きを選択し、しっかりとした主張・立証を行う方が良いとされています。
どのような手続きが有効であるのか、どのような対策が必要になるのか等は、個別の事件ごとに異なりますので、労働事件で法的手続きを検討される場合には、是非当事務所へご相談ください。