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コラム

「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)について

投稿日

2021.02.19

投稿者

芳賀由紀子

カテゴリー

その他企業法務全般

1.令和元年12月4日「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号)が成立し、同月11日公布されました。令和3年3月1日から施行される内容は、①株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置の整備、②取締役の報酬に関する規律の見直し、③会社補償および役員などのために締結される保険契約に関する規律の整備、④社外取締役の活用等、⑤社債の管理に関する規律の見直し、⑥株式交付制度の創設、など様々です。

2.今回は、①ないし⑥の改正のうち、④社外取締役の活用等について、お話したいと思います。

・業務執行の社外取締役への委託(改正会社法348条の2)
会社法は、社外取締役について「株式会社の取締役であって、当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人でなく、かつ、過去に当該株式会社又はその子会社の業務執行取締役若しくは執行役又は支配人その他の使用人となったことがないものをいう」(会社法2条15項イ)と規定しています。
現行法上、社外取締役は、会社の「業務を執行」した場合には社外性を失うとされていますが、従来から、すべての場面で業務執行を否定していては、社外取締役が期待されている役割を果たすことができないのではないかとの声がありました。とくに、マネジメント・バイアウトの場面や親子会社間の取引の場面など、株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、利害関係のない社外取締役に職務を果たしてもらうことがあり、これが、業務執行に当たるかどうかは判例上も明確ではなく、また、学説上も争いがありました。
そこで、改正後の会社法では、株式会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるときは、当該株式会社は、その都度、取締役会の決議によって、当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができることとし、委託された業務の執行をしても社外取締役の資格を失わないこととし(改正会社法348条の2)、上記の問題の解決を図ったのです。
これにより、例外的に社外取締役が業務を執行できる場合が明確となり、必要に応じて、積極的に社外取締役を活用していくことが期待されています。

・社外取締役を置くことの義務付け(改正会社法327条の2)
改正前は、社外取締役を置いていない上場会社等(※1)は定時株主総会でその理由の開示義務を負うのみでしたが、改正後の会社法では、上場会社等は社外取締役を置かなければならないこととされました(改正会社法327条の2)。改正によって、明確に、社外取締役を置くことが法律上義務付けられたわけです。
このように法律で、上場会社等に社外取締役を置くことを機務付けることとした理由について、法務省は「我が国の資本市場が信頼される環境を整備し、上場会社等については、社外取締役による監督が保証されているというメッセージを内外に発信するため、上場会社等は社外取締役を置かなければならない」ためとしています。
現時点でも多くの上場会社等が社外取締役を設置していますが、施行日以降は設置が義務付けられることに注意が必要です。

 3.以上、会社法改正について簡単にお話させていただきました。何かわからない点等ありましたら、いつでも弁護士にご相談ください。

※1:事業年度の末日において監査役設置会社であって(公開会社であり、かつ、大会社であるものに限る)であって金融商品取引法第24条第1項の規定によりその発行する株式について有価証券報告書を内閣総理大臣に提出しなければならないもの