第1 はじめに
刑事事件の被疑者(報道などでは「容疑者」と表現されることが多いです)として、逮捕されると、最大で23日間にわたって身柄が拘束されることとなります。このように長期間拘束されることで、被疑者には精神的なストレスがかかるだけではなく、会社や学校に行くことができない等という重大な不利益を被ることとなります。そのため、身柄拘束を受けている刑事事件を受任した場合、弁護士は早期の身柄解放に向けた活動を行うことが多いです。
そこで、刑事手続の流れを簡単にご説明したうえで、弁護士が早期の身柄解放に向けてどのような活動を行うのかを解説します。なお、今回は誌面の都合上、逮捕後から勾留決定までの期間に行う弁護士の活動の一例をご紹介します。
第2 刑事手続の流れ
弁護士の活動を知る前提として、逮捕から起訴されるまでの流れを確認しておく必要があります。
まず、被疑者は逮捕されると、原則として72時間(=3日間)は身柄を拘束されることとなります。細かい手続としては、まずは、48時間は警察が身柄をとっており、その後事件は検察庁に送致され、さらに24時間の身柄拘束が可能となります。
逮捕による72時間の身柄拘束後も身柄拘束を継続するためには、検察官が勾留請求というものを行う必要があります。裁判所がこれを認めるとさらに10日間の身柄拘束が続くということとなります。
そして、この10日間の勾留を経ても、捜査の必要性等がある場合、検察官は再勾留の請求を裁判所に行います。そして、裁判所がこれを認めた場合、最大で10日間の勾留延長となります。
さらに、起訴が決まると、起訴後も勾留が続くということになります。
第3 逮捕~勾留前までの弁護士の活動
1 検察官による勾留請求を阻止する
逮捕による身柄拘束については、裁判所等に異議申立をできる制度がありません。そのため、弁護士としては、まず、検察官による勾留請求を阻止するために活動することとなります。具体的には、検察官に対し、勾留請求をすべきでない旨の意見書を提出することが考えられます。意見書に記載することが考えられる事柄は後述します。
2 裁判官による勾留決定を阻止する
検察官が勾留請求をした場合には、裁判所に対し、勾留請求を却下するべきであるとの意見書を提出することが考えられます。意見書に記載する内容は後述します。
3 意見書に記載することが考えられる内容
検察官と裁判官に提出する意見書については、記載すべき事項が重なる部分が多いため、ここでは、一緒に説明いたします。
意見書には、まず、身柄拘束の必要性がないことを記載することとなります。具体的には、①逃亡するおそれがないこと、②証拠隠滅のおそれがないことの2つをアピールする必要があります。さらに、③身柄拘束による不利益が大きいこともアピールする必要があります。
逮捕から勾留請求がなされるまでにはあまり時間がありませんので、活動できることは限られていますが、①②については、被疑者を監督する者がいることなどを主張することが考えられます。このときには、監督者となる者に身柄引受書に署名していただき、意見書と一緒に提出するということも考えられます。
また、③については、定職があることや学校に通っており身柄拘束が続けば退職や退学を余儀なくされるおそれがあること、被疑者による介護を必要としている者がいることなどを主張することが考えます。
第4 まとめ
今回は、刑事手続の流れを簡単にご説明し、逮捕後から勾留決定までの期間に行う弁護士の活動の一例をご紹介いたしました。勾留決定後の活動についてはまた別の機会にご説明いたします。
以上