こんにちは。
弁護士の井上瞳(いのうえひとみ)です。
今回は、建設業法改正の主なポイントについて解説します。
1 はじめに
建設業界は、社会の整備や災害時の安全確保等のため、重要な役割を担っています。
しかし、近年、建設業界は、人手不足、技術者の高齢化、資材価格の高騰、長時間労などの様々な問題を抱えています。
それらの問題に対応すべく、2024年6月7日、建設業法の改正案が国会で可決され、2025年中には改正法が全面施行される予定です。
2 改正のポイント
⑴ 労働者の賃金確保に対応
・労働者の賃金確保の努力義務化
労働者の技能や経験に応じた適切な賃金確保を建設業者の努力義務としました。
・標準労務費の勧告
建設業界全体での適正の労務費が確保されるよう、中央建設業審議会に対し、建設工事の労務費に関する基準(標準労務費)を作成し、その実施を勧告する権限が付与されました。
・著しく低い見積り・見積り依頼の禁止
建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等を著しく下回る見積りの提示や、そのような見積りを求めることが禁止されました。
・原価割れ契約の禁止
労務費削減を防止するため、材料費やその他の経費が通常必要とされる原価を著しく下回る請負契約が禁止されました。
⑵ 資材価格高騰に対応
・請負契約前の規制
資材価格の急激な高騰が労務費に影響を及ぼすことを防ぐため、請負契約に価格変更の条件を明記することが義務付けられました。
また、資材高騰などによって工事の円滑な実施に支障があるおそれがある場合、受注者から注文者へ情報提供を行うことも義務付けられました。
・請負契約後の規制
請負契約時の価格変更の条件に基づき、受注者が注文者に対し、契約内容の変更を申し入れた際、注文者は、その変更の協議に誠実に応じることが努力義務化されました。
⑶ 働き方改革と生産性向上
・著しく短い工期の請負契約の禁止:
労働者の過重労働の防止のため、発注者だけでなく受注者についても「著しく短い工期」による契約締結を行うことが禁止されました。
・現場技術者の専任義務の合理化
施工管理の柔軟性向上のため、特定の条件(音声・映像の送受信が可能な環境が整備されているなど)を満たす場合、監理技術者・主任技術者が複数の現場を兼任することが可能となりました。
・ICTの活用の促進
長時間労働の是正と効率的な現場管理の実現のため、特定建設業者や公共工事受注者に対し、効率的な現場管理を努力義務化し、ICT技術の活用を推進します。
3 おわりに
今回の建設業法改正により、社内規程や契約書の改訂等を検討されることと思います。
当事務所の弁護士は、社内規定や契約書のチェックなど行っております。
お気軽にご相談ください。