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コラム

クレジットカード枠の現金化について

黒岩 英一

投稿日

2022.08.04

投稿者

黒岩 英一

カテゴリー

債務整理・過払い金返還請求

1 クレジットカード枠の現金化をご存じでしょうか。

主に2つのやり方があり、

①買取方式

ブランド商品や金券など、買取金額の割合が高い商品を買って、それを業者に売る方法と、

②キャッシュバック方式

クレジットカードで低廉な商品を高額で購入して、その○%をキャッシュバックとして受け取る、

 

というものです。

 

2 クレジットカード枠の現金化の異常性

クレジットカード枠の現金化で検索をすると、たくさんのサイトがヒットします。

中の広告を見ると、非常におかしい記事が並んでいます。

(1)借金に抵抗のある方にオススメ

意識されていない方も多いと思いますが、そもそもクレジットカードの利用は借金です。

2回払いまでの利用なら利息はつきませんが、その日に必要な現金がなく、クレジットカード枠を現金化するしかないような方が、1、2回払いを利用できるのかは非常に疑問です。

借金に抵抗のある方に利用を勧めるのが実体としては借金であるというのは、ブラックジョークでしょう。

(2)換金率

クレジットカード枠の現金化をする場合、換金率は80~90%程度のようです。

仮に90%とすると、クレジットカードで翌月、利息なしの1回払としても、1ヶ月で10%の金利を払っていることになり、年率換算すると120%になります(クレジットカードで分割払いとしていると、支払先は異なりますが、その利息も上乗せされます。)。

利用者にとって極めて負担の重い方法であり、だからこそ業者はそれだけ利益を得られるので、多くの広告を出せるといえますが、この利率は、利息制限法や出資法で定める上限金利を大幅に超えています。

ヤミ金ともいえる利率です。

 

3 買取方式の違法性

①について、カード会社は、売却目的で商品を購入することを規約で禁じていますので、この目的で商品を購入すると、カード会社を騙してことになり、詐欺罪に問われる可能性があります。

これについては、購入目的を判断できないから罪に問われないという記載が見受けられますが、最初から転売目的で購入する前提で記事が書かれているのに、購入目的が分からないというのはただの方便であり、詐欺罪に問われない理由にはなりません。

 

4 キャッシュバック方式の違法性

インターネット広告で出てくるのは、②キャッシュバック方式が主です。

調べると、現金はないけれど、カードの枠はある状況で、急な出費が必要になったときに使える、というものである、ということで出てきます。

インターネット上の広告や記事では、何の違法性もないように記載されていますが、そうしないと商売にならないから違法性がないと言っているだけで、明白に違法です。

「クレジットカード枠の現金化」で検索されると分かるのですが、いろいろなサイトで違法性はないという記事が多数出てきます。しかし、これはアフィリエイト・アクセス数稼ぎのための記事であり、詳細な検証をしているものではありませんし、責任を取れる人間が書いているものではありません。

 

適法性の根拠としてよく記載されているのは、商品のキャッシュバックと同じで、それが高い割合になっているだけだから問題はない、というものです。

しかし、現金化これは景品表示法の限度額である「取引価額の10分の2」(総付景品)を明らかに超えていて、違法です。

 

https://www.caa.go.jp/policies/policy/representation/fair_labeling/premium_regulation/

 

これは業者を規制する法律だから、利用する側は問題がない、という反論があるかもしれませんが、価値のない商品を異常な高価格で購入するわけで、その目的が違法なキャッシュバックであることは明らかですから、これを知らなかったという言い訳は通用しません。

 

5 一番大きな問題は、法的な債務整理に影響すること

クレジットカード枠の現金化を利用する方は、お金に困っている方がほとんどだと思います。

業者やアフィリエイト目的のサイト運営者は意図的に言及していませんが、クレジットカード枠の現金化をおこなっていると、自己破産などの法的手続きの中で、問題となります。

「自己破産ができなくなる」という刺激的な言葉が使われているサイトもありますが、そこまでいかなくても、問題のある行為をしたということで、法的手続きの進行に問題が出たり、場合によっては本来必要のなかった支払が必要になることもあります。

ちょっと考えると分かるのですが、クレジットカード枠の現金化は、単なる一時しのぎの方法であり、問題の先送りにしかなりません。一時的に支払ができない状況なら、社会福祉協議会の貸付を利用するなどの対策が考えられますし、その貸付で対応できないほどの状況なら、自己破産などの法的手続きを利用すべきです。

借金の問題は、先送りにすればするほど、債務や利害関係者の増加というかたちで、問題が大きくなります。借金が減らない生活が続く場合、収支のバランスが崩れていることが多く、バランスが崩れているのなら、根本的な修正をしないと、問題は解決しません。

当事務所では、債務整理手続きも承っておりますので、債務の返済などにお困りの際には、気軽にご相談ください。

以上