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コラム

クレプトマニア②

関五行

投稿日

2018.03.12

投稿者

関 五行

カテゴリー

弁護士の関です。

前回クレプトマニアに関して記載したコラムを掲載したところ、何人かの方からご質問いただいたので、改めてご説明させていただきます。

まず、ご自分がクレプトマニア(窃盗症。以下、「クレプトマニア」に統一します)に罹患しているか否かは、医師の中でも当該分野における専門家以外は判断(診断)できません。ご自分で判断することなどできませんし、勿論弁護士も到底不可能です。

したがいまして、ご自身ないしご家族がクレプトマニアかもしれないと考えた場合は、まずは何よりも当該分野の専門的知識を有している医師の診察を受けるべきです。私を含め素人が安易に判断すべきではありません。

また、専門的研究分野の中でもクレプトマニア該当性の診断基準は必ずしも一義的ではありません。

例えば、窃盗症の診断基準として「個人的に用いるためでもなく、またはその金銭的価値のためでもなく、物を盗もうとする衝動に対抗できなくなることが繰り返される」というものがあります(DSM-5における診断基準A)。

言うまでもなく、当該基準を機械的ないし厳格に適用すれば、窃盗症に該当する者の範囲は非常に狭まります。盗んだものを少しでも個人的に使用したり、経済的な理由を有していれば除外されることになるからです。しかしながら、以前ご紹介した竹村道夫医師によれば、同医師がこれまで診療した1430例において、当該基準に合致する症例は1例しかなかったそうです(竹村道夫・「窃盗症の概念と治療」1179頁。もっとも、症例数は当該論文発表時のものです)。

私個人の経験からしても、何らの経済的理由も個人的に使うための欲求も有さず、万引き等を繰り返す方に会ったことはありません。

勿論、すでに記載しているように、私にはどちらの基準が適切なのか判断することなどできませんし、そのために必要な学識も持ち合わせておりません。あくまで診断基準の多様性を示す一例としてあげたに過ぎません。

前回のコラムでも記載しましたが、クレプトマニアは恐ろしい疾患です。仮に素人判断で専門的治療を受ける機会を逸したとすればそれは致命的とも言えます。

少しでもご自身、ご家族について心配なことがある場合は、必ず専門家の診断を受けるようにされてください。

以上