弁護士の関です。
今回もクレプトマニア(窃盗症や窃盗依存とも言います。以下では、「クレプトマニア」に統一します)について簡単に述べさせていただきます。
これまでの私のコラムを読まれている方の中には、万引で刑務所に入れられるなんてあまりに厳し過ぎるとか、そうなってしまう前にいち早く治療すれば良かったのに・・と思われる方がいるかもしれません。
しかしながら、勿論一度万引をしただけで実刑が科される(刑務所に入れられる)ことはまずあり得ません。
あくまで一般的なパターンに過ぎませんが、通常は①微罪処分→②略式命令による罰金(起訴猶予となる場合もあります)→③起訴(公判請求)により有罪かつ執行猶予の判決→④(特に執行猶予中の再犯の場合)起訴により有罪かつ実刑の判決といった流れを辿ることが多いようです。さらに、①②は、繰り返して何度か処分がなされることもありますので、実際には、万引の罪により実刑が科されるのはそれほどまでに万引行為を繰り返し、その度に刑事処分となっているからに他なりません。
そうしますと、何故そこまで(=④の段階に至るまで)万引行為を繰り返す前に、専門機関で治療等を行わなかったのかとの疑問を改めて抱かれる方がいらっしゃるでしょう。
結論から言えば、そもそもクレプトマニアや専門医療機関の存在自体を知らなかったという場合もありますが、多くの場合は本人(及びご家族等)が治療の必要性自体を認識しないからです。
弁護士である私のところに医療機関等から紹介ないし本人や家族から依頼があるのは、多くの場合④(しかも一審で実刑判決が下されその控訴審段階で相談に来られる方が大多数です)、早くても③の段階です。しかしながら、それでも特に③の段階の方は、自分がクレプトマニアに該当し、治療の必要性が存在することを正面から認めません。又は、治療の必要性自体は認める方でも、(多くの場合執行猶予付きで)刑事処分が終わると、その後安心して治療を中断してしまいます。そして、その結果、残念ながら今度は④に至ってしまいます。
これまでのコラムでも繰り返し述べていますが、クレプトマニアは疾病であり専門的治療を受けなければ改善することはありません。クレプトマニアに該当するか否かも専門的知識を有する医師でなければ診断できません。したがって、治療の必要性を自分で判断すること自体、本来であればおかしなことです。
私が知っているだけでも、これまで多くの方が治療の必要性を軽視したまま、①~④の流れを辿り実刑判決にまで至っています。仮に④で再度の執行猶予判決が得られた方でも、長期間の入院生活を余儀なくされています。自分や家族に万引行為を繰り返す方がいる場合は、その方が①~④のどの段階にいるのかを見極めてください(実際には、万引行為を繰り返しているけれども、警察に発覚していない①より前の段階の方も多いと思います。逆に③や④の方はすでに刑事事件化され弁護人がいらっしゃるでしょう)。その上で、やはり可能な限り早く専門医療機関での診察を受けることが何よりも重要と考えます。