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コラム

クレプトマニア⑭

関五行

投稿日

2022.10.28

投稿者

関 五行

カテゴリー

刑事

関五行

弁護士の関です。

今回もクレプトマニア(窃盗症や窃盗依存症ともいいます。以下では、「クレプトマニア」に統一します。)についてお話いたします。

 

当たり前ですが、私は弁護士ですので、基本的にクレプトマニアの方に関わるのは刑事弁護の際になります。つまり、ご本人がすでに万引等の窃盗を犯し、刑事処分の対象となってすいる場合です(私の場合は、再犯等で実刑の可能性が高くなっていることが多いです)。

しかしながら、クレプトマニアは根本部分を医学的に治療しないと症状が改善することはありません。疾病なのだから当然です。その意味で、私を含めた弁護人のやることは基本的には変わりません。ご本人を専門医療機関に繋げた上で、検察官や裁判所に治療の必要性を訴えることが原則です。その中で、長期的な入院が必要になることも当然あります。いずれにせよ短期間で寛解するような疾病ではありません。

つまり何が言いたいかと言うと、刑事裁判等の時だけ、そして刑事処分のためだけにクレプトマニアの治療を行なっても、その効果は低いということです。

何度かこのコラムでご紹介した赤城高原ホスピタルの竹村道夫医師も、ご自身の論文の中で「起訴前捜査中、あるいは起訴後の略式命令待ち、裁判進行中など、司法判断待ちの期間は、最適の治療チャンスである。この機を逃さず、治療につなぐべきである。これには、常習窃盗治療に詳しい弁護士との協力が必要である」(窃盗症の概念と治療・1184~1185頁)と述べられていますが、あくまでも刑事裁判を絶好の機会としてその後の継続的治療に繋げるべきとの趣旨を仰っているに過ぎません。

より端的に言えば、クレプトマニア、あるいはそれが疑われる方が窃盗を犯し、刑事手続の当事者となった場合、いわゆる処分を軽くするテクニック的な手段は基本的にありません。また、例えそれで乗り切ったとしても、その後ほぼ確実に再犯となりますから、長期的に見ればむしろ有害とすら言えます。

残念ながらクレプトマニアの方は、何度も刑事手続の当事者となることがあります。起訴されるのかどうか、実刑になるのかどうか、それを避けるためにはどういった証拠が有効なのか、いずれもとても重要なことです。心配になって当然です。
しかしそういったことばかりで根本部分から目を背け、クレプトマニアに対する専門治療を行わないのでは意味がありません。有効な治療を受けないままのクレプトマニアの再犯率はほぼ100%と言って構いません。

くれぐれも現在担当される弁護人の先生とよく相談して、医療機関へ繋がることを怠らないようにされてください。