第1 はじめに
個人の債務整理の方法としては、大きく分けて「任意整理」「自己破産」「個人再生」の3つの方法があります。この3つの方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。今回は、3つの方法のうち「任意整理」についてご説明したいと思います。
第2 任意整理の概要
任意整理とは、裁判所の関与なく、債務者(の代理人弁護士)が、債権者と交渉にすることによって債務を整理するものです。具体的には、債務の一部免除や分割払いなどの交渉を行います。裁判所の関与がないということが他の2つの方法と大きく異なる点といえます。
第3 任意整理のメリット
1 手続が簡単で費用も比較的安価であること
任意整理は裁判所の関与がありませんので、裁判所に提出する書類等を用意する必要がありません。また、裁判所に対する申立手数料や予納金という費用もかかりません。ですので、容易かつ比較的安価に手続を行うことができます。
2 柔軟な処理が可能であること
任意整理は、個々の債権者と交渉を行って債務整理を行う方法ですので、個々の債権者に応じて柔軟な交渉を行うことができるメリットがあります。
例えば、友人などから借金をしており、友人には迷惑を掛けたくないという場合には、友人には返済を続け、他の債務者に対してのみ任意整理の交渉を行うということも可能です。
第4 任意整理のデメリット
1 任意整理が成功するかは債権者次第であること
任意整理は、債権者との交渉で行うものですので、債権者が納得しなければ、債務の一部免除や分割払いの合意を締結することはできません。
一般的に、債務の一部免除については、特別な事情がない限り、交渉が成立することはなかなか簡単ではないようです。
一方、分割払いの交渉については、3年36回払い以内での返済が可能であれば、交渉が成立するケースも多いようです。
もっとも、繰り返しになりますが、交渉に応じてもらえるかは債権者次第ですので、交渉が成立する基準を一般化することはできません。
第5 まとめ
このように任意整理は、他の手段よりも緩やかな債務整理の方法といえます。一方、任意整理によって、債務が減ることはあまり期待できず、分割払いの交渉がメインとなってしまいます。
そこで、任意整理を行うか否かについては、3年36回以内の分割払いによって債務の返済が可能かどうかという点が1つの基準になるといえるでしょう。
また、まずは任意整理をやってみて、債権者との交渉がまとまらない場合に個人再生や自己破産に移行するというやり方も考えられます。
参考文献
長瀨佑志・長瀨威志・母壁明日香著『新版 若手弁護士のための初動対応の実務』日本能率協会マネジメントセンター 2017年