米国バイデン大統領と共和党のマッカーシー下院議長は、週末連邦債務上限を実質的に引き上げることを基本合意がなったと報道。
来る5月31日にも議会での採決が行われるかも。
上下両院で可決されれば、米国はデフォールト(債務不履行)を回避することができる。
なんとか可決されればと良いなあと思う。
しかしながら、簡単にはいかなそうである。
バイデン大統領は、身内の民主党左派から、マッカーシー下院議長は、共和党のフリーダムコーカス(保守強硬派)からそれぞれ反対されるかもしれないからである。
民主党左派の中心人物サンダース上院議員は、合衆国憲法修正第14条で「合衆国の公的債務の効力が問われてはならない」との規定を盾に、たとえ共和党の反対で債務上限法案が可決しなくてもこの修正第14条によって強行突破すれば、米国国債のデフォールト回避可能と主張する。
しかしながら、こんな理屈が通れば、米国国債の長い伝統と信用は丸つぶれになりかねない。
なぜならば、米国国債は、初代財務長官アレキサンダー・ハミルトン以来、デフォールト(債務不履行)しない、そして議会が行政府を厳しく監視して、野放図な財政拡大を許さないという伝統と法があり、だからこそ債権者は米国国債を信用して買うのであるから、行政府が議会とは無関係に勝手に借金が出来るというのであれば、信用できなくなって、米国国債を買ってくれなくなるからである。
他方、共和党保守強硬派は、政府が社会福祉などで財政を拡大して、あげくに増税をすることにことごとく反対し、米国国債のデフォールトも平気の平左のようであり、債務上限問題の解決にも熱心ではない。
ここで偉大な米国初代財務長官アレキサンダー・ハミルトンの話をしよう。
以下は、「国債と金利をめぐる300年史」(東洋経済新報社)による。
米国建国の独立戦争が始まって後、旧宗主国英国相手の戦争で莫大な戦費がかかってしまい、独立派は、これらを借金でまかなった。
1789年、初代大統領ワシントンの副官をしていたアレキサンダー・ハミルトンが初代財務長官の就任早々の任務が、まさに、この独立戦争に要した費用の捻出であった。
当時の米国議会の中では、独立戦争の時に、将来支払を約束して調達した政府債務については、独立後の新しい議会になった今、返済する必要はないという空気であった。
米国市民の世論も、租税負担回避という目先の利害にとらわれ、債務返済の資金捻出のために増税されてはたまらないという意見が強かった。
ところが、これに対し、初代財務長官ハミルトンは違っていた。
新しい独立国となった米国は今後の政府として永続して国家活動を続ける以上、資金調達の必要性がなくなるはずはなく、将来とも米国が借金するためには、信用が第一である。
ハミルトンは、米国は、その借金を、歯を食いしばってでも払うべきだとして、公債の額面全額を償還する政策を実施した。
彼は、米国市民の目先の利益を拒否し、将来米国国家百年の戦略をこそ重視したのである。 (同書102頁、103頁)
米国国債デフォールトなしの伝統は一朝一夕に出来たものではない。このようなハミルトンたちのような先人の血のにじむような努力の積み重ねによって作り上げられたと思う。
借金は必ず返さなければならないは、金融リテラシーの一つであろう。
以 上