最近、新型肺炎の流行に伴い各分野で大きな影響が生じてますね。
一人一人の健康面はもちろんのこと、経済状況や働き方にも波及しており、予断を許さない状況が続いています。
月並みですが、一日も早い事態の収束を願うばかりです。
さて、この春は新型肺炎の話題で持ちきりですが、主に債権法と呼ばれる分野の改正が中心となっている、民法の一部を改正する法律(の施行)が、2020年4月1日に迫りました。
みなさん、準備はできているでしょうか。
今回の改正は、新規定が創設されたり、従来の解釈を大きく変更することから、実務に与える影響が大きいものもあれば、従来の判例法理を明確化したり、条文の用語を整理したにとどまるものあります。
個人的には、従来の判例法理を明確化したり、条文の用語の整理にとどまるものであっても軽視することはできないと思います。
やはり、個々の契約は法律をベースにして作成する以上、法律の規定ぶりに合わせて契約の文言を工夫する方が、疑義が生じにくく、トラブルの予防になります。
今回の改正をきっかけに契約書のフォーマットを見直されている方もいらっしゃると思いますが、まだお済みでない方はぜひご一考下さい。
さて、私からは賃貸借に関する規定の改正の中から、「賃貸借の存在期間」に関する改正をご紹介したいと思います。
以下では、改正後の民法を「新法」と呼び、現行の民法を「旧法」と呼びます。
新法604条は次のように規定されています。
新法604条
1 賃貸借の存在期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
2 賃貸借の存在期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。
旧法604条では、賃貸借の存在期間の上限は20年と定められていました。
その理由として、賃貸借の存続期間が長期となると、目的物の退廃や毀損が顧みられない状況となって社会経済上の不利益が生じるおそれがある、などと説明されていました。
しかし、現代では、例えば、大型のプロジェクトにおける重機・プラントの賃貸借や、ゴルフ場・太陽光発電所の設置を目的とする賃貸借で20年を超える存続期間を許容する必要があるとの要請から、上限をみなすことになりました。
なお、本条は、建物の賃貸借については、借地借家法29条の2項により適用が排除されます。また、建物所有を目的とする土地の賃貸借についても、存続期間の下限が30年とされ(借地借家法3条)、今回の改正以前から、存続期間の上限は修正されています。
また、農地や採草放牧地の賃貸借については、農地法19条により賃貸借の存続期間が50年となっています。
要するに借地借家法や農地法が適用される賃貸借については、改正の影響はないものの、それ以外の賃貸借については存続期間が大幅に延長されますので、実務への影響は大きいものと考えられます。
本条1項は、2020年4月1日以降に締結した賃貸借契約から適用されます。
本条2項については、2020年4月1日以前に締結した賃貸借契約であっても、同日以後に更新する場合には適用され、更新の時から50年を上限として更新する旨を合意することが可能となります。
以上