テレビの半沢直樹と鉄の女と評判の女性弁護士との間で「貸すも親切、貸さぬも親切」という言葉が交わされた場面が印象的。
インターネットで見てみると、今は亡き全国信用金庫協会会長、東京の大手信用金庫名物理事長「小原鐵五郎」(おばらてつごろう)さんの有名な言葉として紹介されている。
私自身は、以前、テレビ東京の報道番組「WBS」の中で、生前の小原理事長ご本人が「貸すも情け、貸さぬも情け」とおっしゃっていたのを聞いた記憶がある。
もう一つ、小原さんのマスコミに対する苦言。自分の名前を新聞などで「鐵五郎」でなく「鉄五郎」と間違って書かれることがあるとのこと。他人さまの大事なお金をお預かりする金融機関経営者の名前が「鉄」では、「金」を「失う」となってしまうので困るからだそうである。
「貸すも親切、貸さぬも親切」「貸すも情け、貸さぬも情け」いずれにしても、これらの言葉はバンカーの心がけとして今も深く味あうべき、そして借りる立場の人間にも借り過ぎに注意し、投機目的でなく真に生きる借金をしなければならないことを教えてくれる。
ところで今は新型コロナウイルス流行の時代、最近読んだ「社長!コロナを生き残るにはこの3つをやりなさい」松本光輝著、あさ出版の本(以下「松本先生の本」という。)は、そんな時代に生きる中小企業経営者にとって大いに参考になると思う。
この「松本先生の本」の中で「1 なぜ銀行は今しつこく融資を勧めるのか 『コロナショックの影響を受けて売上が落ちたかどうか』というこの1点」「借りられる状況ならば借りておく」「国の支援は積極的に活用する」と書かれている。
そして、「日本政策金融公庫 コロナウイルス感染症特別貸付」「信用保証協会 セーフティーネット保証4号」などいろいろな中小企業にとって使い勝手の良い制度融資のことが要領よく紹介されている。
先に「借り過ぎに注意」と書いたが、この「松本先生の本」は借金の勧めであり、二つを述べる私の言うことは矛盾すると言われそうである。
しかしながら、決して矛盾ではなく、両方大事だと思う。
新型コロナウィルスで三密回避、ソーシャル ディスタンスなど、とりわけ飲食業界では自粛が言われて、売上蒸発。ほかの業種にしても多かれ、少なかれ売上減少に悩まされている。
そんなとき、商売を続けたいのであれば、たとえ売上がなくても固定費、例えば、店の家賃、正規雇用従業員の給料などの支払いは絶対。
知り合いのある経営者の方が言われた、「資金繰りについては、百戦百勝が必須、九十九勝1敗はダメ、それは倒産」という言葉が思い出される。
私も裁判所で会社更生事件を担当していたとき、担当している、ある更生会社の更生管財人社長に日繰りの資金繰り表を見せてもらって、某月某日の従業員給料や材料費支払いは、その前の某月某日に前渡金が入るから大丈夫などと説明を受けていたことが思い出される。世の中には、資金繰りに悩まされる裁判官もいるのである。
「松本先生の本」では、「借入金返済条件の変更(リ・スケジュール)」「認定支援機関」「経営改善計画」「信用保証協会による保証付き融資や代位弁済」「最低3年間資金を不足させないことを考えて経営することが不可欠である。」など、中小企業が新型コロナウィルス時代に生き残っていくために金融機関との関わりが重要になるが、これら金融機関との交渉にも役立つ知識も取り上げられている。
この新型コロナウィルス時代を生き抜くには、「松本先生の本」で言われているように「最低3年間資金を不足させないことを考えて経営することが不可欠である。」の言葉を十分にかみしめて、中小企業経営者としては取引金融機関との交渉をしていかなければならない。
銀行への支払いが滞りがちになってから銀行との交渉を始めるような場合には、中小企業経営者は取引銀行に対し負い目を感じて、対等な交渉など期待できない。
そのような時こそ、弁護士の交渉力を利用して欲しい。
今はどうか知らないが、昔は、プロ野球の毎年の契約交渉で、野球会社側は、プロ野球選手が交渉の場に弁護士を立ち会わせることは嫌ったそうである。高給取りのプロ野球選手も高い報酬を出して会社との交渉に優秀な弁護士を雇うことが出来るであろうが、普段から顧問弁護士までいるかどうか?
これに対し、野球球団会社側も、自分たちも弁護士は立ち会わせないと言いながら、会社には顧問弁護士がいて、選手との交渉前に何度も予行演習をし、顧問弁護士が作成した想定問答をしっかり暗記して選手との交渉に臨むのである。
野球球団会社と選手との交渉での勝負は交渉前に決まっているのかもしれない。
弁護士は、依頼者の顧問税理士と協力し、知り合いの税理士や中小企業診断士の助けも借りて交渉に当たる覚悟はある。
本問やその他でも何かご相談があれば、当法人北九州オフィスの電話093-967-1652に電話して弁護士永留を呼び出して下さい。
以 上