法務大臣の諮問機関である法制審議会が、離婚後の「共同親権」を導入する案を盛り込んだ中間試案を取りまとめるとの報道がなされています。
話題性のある「共同親権」以外にも、法制審では家族法制について幅広い議論がなされており、その1つに財産分与に関する規律の見直しがあります。
財産分与の方法について、現行法では「家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める」(民法768条3項)とするだけで、具体的な記述はありません。
現時点で判明している中間試案の「たたき台」には、次のような見直し案が記載されています。
「家庭裁判所は、離婚後の当事者間の財産上の衡平を図るため、当事者双方がその協力によって取得し、又は維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入その他一切の事情を考慮し、分与させるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定めるものとする。この場合において、当事者双方がその協力により財産を取得し、又は維持するについての各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは、相等しいものとする。」
現行法に比べるとかなり長い記述となっています。
主なポイントを3つ挙げると、
①「取得し」の後に「又は維持した」という文言が加わったことで、夫婦の一方が有する財産であっても、他方の協力によって価値が維持された場合には、清算の対象となることを明確にした。
②裁判所が考慮する要素が列挙された。とくに、婚姻の期間、生活水準、当事者の年齢、職業、収入、心身の状況といった要素を挙げ、財産分与の性質には清算的要素だけでなく扶養的要素も含まれることを明確にした。
③夫婦共有財産の取得・維持に対する寄与の程度は、原則として2分の1とする推定規定を設けた。
いずれも、これまでの裁判実務に概ね沿うものであり、目新しいものではありません。そうした実務の取扱いを明文化するというのは、基準の明確化という意味で良いことなのかもしれませんが、一方で、婚姻のあり方が多様化する今日において、かつて専業主婦の家事労働を評価すべく定着した「2分の1ルール」を敢えて明記することや、扶養的要素を前景化するような規定ぶりについては、評価が分かれるところかもしれません。
このほかにも、財産分与の請求ができる期限を現行の2年から、3年または5年に延長するなどの見直しも検討されています。
以上のような見直しによって、財産分与のあり方は変わるのでしょうか。財産分与をめぐる紛争はいわば十人十色。たとえ法改正がなされたとしても、機械的に結論が出ることはありません。これからも、当事者や弁護士・裁判官など関係者が、各事案に応じて知恵を絞っていかねばならないことに、変わりはなさそうです。
以上