さて,東京オリンピックもあっという間に終わってしまいました。
表敬訪問先で金メダルをかじられた,というニュースが世間を騒がせましたが,ところで,オリンピックの金メダルって何でできているかご存じでしょうか。
金メダルって言うくらいだから金(ゴールド)でできていると思っていたのですが,実は,金メダルは銀でできているそうです。
メダルのサイズや素材については,次のように定められています(JOCホームページより)。
・ サイズは,少なくとも直径60mm,厚さ3mmでなければならない。
・ 1位と2位のメダルは銀製で,少なくとも純度1000分の925であるものでなければならない。
・ 金メダルについては,少なくとも6グラムの純金で金張り又はメッキを施さなければならない。
【弁護士バッジの素材】
何でこんな話をするのかというと,実は,弁護士のバッジも金メダルと同じような作りになっているからです。
弁護士バッジのデザイン等については,日本弁護士連合会が定めた「弁護士記章規則」(以下,「記章規則」といいます。)というルールが存在します。
なお,「きしょう」という漢字には,「記章」と書く場合のほかに「徽章」という難しい漢字を使用する場合もあります。
「記章」とは,記念に与えるしるし,という意味であるのに対し,「徽章」とは,身分や職業,所属や資格などを示すものとして帽子や衣服につけるしるしのことをいいます。
この意味内容からすると,弁護士「徽章」と書くほうが正しいように思えますが,おそらく,「徽」という字が常用漢字でないため,常用漢字である「記」の字を使用しているのではないかと思います。
弁護士バッジの素材については,記章規則には規定されていませんが,弁護士バッジの裏面に「純銀」と刻印されています。つまり,オリンピックの金メダルと同じように,純銀製のバッジの上に金メッキを施しているのです(ただし,この金メッキの素材が何かについては,記章規則に規定はなく,分かりませんでしたが,おそらく純金ではないでしょう。)。
なお,記章規則には,申請すると自らの費用負担で「金製弁護士記章」,つまり銀ではなく金でできた弁護士バッジの交付を受けられると規定されています(記章規則3条3項,4項)。
【弁護士バッジの表面について】
記章規則には,弁護士バッジのデザインについて,「十六弁のひまわり草の花の中心部に秤一台を配する」,「花弁の部分は金色。中心部地色は銀色」と定められています。
ひまわりは正義と自由を,秤(はかり)は公正と平等を追い求めることを表しているそうです(日本弁護士連合会ホームページより)。
【弁護士バッジの裏面について】
弁護士バッジの表側は,ドラマなどで目にしたことがある方も多いと思いますが,弁護士バッジの裏側を見たことがある人は少ないのではないでしょうか。
先ほど,弁護士バッジの裏面には「純銀」と刻印されている,というお話をしましたが,この他にも次のような刻印がされています。
① 日本弁護士連合会員章
記章規則には弁護士バッジの裏面についても規定があり,「『日本弁護士連合会員章』の文字を刻し,かつ,登録番号を刻する。」と規定されています(記章規則1条 別表)。あの弁護士バッジは,実は会員章だったのです。
② 登録番号
登録番号とは,それぞれの弁護士に1つずつ割り振られている番号で,同じ登録番号を持っている弁護士は存在しません。つまり,弁護士バッジの裏面を見れば,登録番号からそのバッジが誰のものか特定できてしまうのです。
③ 造幣局製
日本弁護士連合会の会員章なのだから弁護士会で作っているのかと思いきや,弁護士バッジは造幣局で作られているのです。
【弁護士バッジの色】
記章規則で弁護士バッジの色は金色と定められていますが,弁護士バッジを長年使用していくうちに金メッキが剥がれて銀の地金が出てきて,「いぶし銀」になってきます。
なので,弁護士バッジの色を見れば,その弁護士がどの程度の経験を積んでいるのかがだいたい分かるのです。弁護士の中には,金ピカのバッジでは「私は新人です。」と言いふらしているようで恥ずかしいので,貫録を出すため弁護士バッジを小銭入れの中に入れて,わざと金メッキが早く剥がれるようにしている人もいるくらいです(ちなみに,私は裁判所か警察署に行くときくらいしかバッジを着けないので,私の弁護士バッジはいまだに金ピカのままです。)。
事務所のボス弁クラスのベテランになると,弁護士バッジはいぶし銀になっていることがほとんどです。なのに,ドラマ等で事務所のボス弁が金ピカのバッジを着けているのを見ると,つい違和感を覚えてしまいます(「金製弁護士記章」の交付を受けたか,弁護士バッジを紛失して再発行を受けたのであれば,ボス弁クラスのベテラン弁護士でもバッジが金ピカということはありえますが・・・)。
町で弁護士バッジを着けている人を見かけたら,バッジの色からその弁護士がどの程度経験を積んでいるのか,予想してみると面白いかもしれません。