Notice: Function _load_textdomain_just_in_time was called incorrectly. Translation loading for the wp-pagenavi domain was triggered too early. This is usually an indicator for some code in the plugin or theme running too early. Translations should be loaded at the init action or later. Please see Debugging in WordPress for more information. (This message was added in version 6.7.0.) in /home/agl-law/www/agl-law.jp/wp-includes/functions.php on line 6114
所有者不明土地の解消 ③所有者不明土地の利用の円滑化 | 弁護士法人ALAW&GOODLOOP | 福岡、北九州、長崎の法律事務所
トップへ戻る

弁護士法人 ALAW&GOODLOOP | 福岡・北九州・長崎の企業法務、法律顧問契約、法律相談

コラム

所有者不明土地の解消 ③所有者不明土地の利用の円滑化

投稿日

2023.06.12

投稿者

山口和則

カテゴリー

不動産関連

1 これまでのコラムでは、2回にわたり、所有者不明土地が発生するのを事前に防止するための対策について説明してきました。

今回のコラムでは、所有者不明土地が発生してしまった場合にどのように対処するのか、事後の対策について説明したいと思います。

2 所有者不明土地・建物の管理制度

⑴ 従来の制度

これまでも、土地や建物の所有者が行方不明の場合には不在者財産管理人を選任する、所有者が死亡してしまい相続人がいるのかいないのかが明らかでない場合には相続財産管理人を選任するという方法がありました。

しかし、これらの制度は、所有者を全く特定できない場合には利用できないという問題点がありました。

そこで、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物について、管理人を選任するという制度が新たに設けられました。

⑵ 申立権者

申立てをできるのは、所有者不明土地・建物につき利害関係を有する者です。

利害関係を有する者にどのような人が含まれるのかについては個別の事案ごとに裁判所が判断することになりますが、公共事業の実施主体や、土地や建物が適切に管理されていないために不利益を被るおそれがある隣地所有者などが想定されています。

また、土地の購入希望者についても、購入計画に具体性があり、土地の利用に利害がある場合には、利害関係人に含まれうると考えられます。

⑶ 対象となる土地・建物

対象となるのは、調査を尽くしても所有者やその所在を知ることができない土地・建物です。

ただし、区分所有建物(マンション等)は所有者不明建物管理制度の対象とはなりません。

⑷ 管理の対象となる財産

管理人が選任された場合、管理の対象となるのは、所有者不明土地・建物のほかに、その土地・建物にある所有者の動産、管理人が得た金銭等の財産(土地・建物の売却代金等)、建物の場合にはその敷地利用権(借地権等)も管理の対象となります。

なお、所有者不明土地の上に老朽化した所有者不明の建物が立っている場合に、土地と建物の両方を管理の対象とするためには、所有者不明土地と建物の両方について管理命令の申立てをする必要があります。

⑸ 管理人の権限

管理人は、所有者不明土地・建物の保存・利用・改良行為を行うことができます。この他に、管理人は、裁判所の許可を得て、所有者不明土地・建物の処分(売却や建物の取壊し等)も行うことができます。

3 共有制度の見直し

⑴ 相続登記がなされずに放置され、所有者不明となった土地の多くは、相続人による共有状態になっています。

共有物に変更を加える場合、共有者全員の同意が必要なため、共有者の中に所在不明の者がいる場合、たとえ軽微な変更であっても行うことができないという問題が生じていました。

また、共有者の中に所在不明の者がいる場合には、共有関係を解消することもできないという問題も生じていました。

そこで、これまでの民法の共有に関するルールが改正され、共有物の利用を円滑にするための仕組みと共有関係を解消しやすくする仕組みが設けられました。

⑵ 共有物の利用を円滑化する仕組み

共有物に変更を加える場合であっても、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、共有者の持分の過半数で決定することができるようになりました。つまり、所在不明の共有者以外の共有者の持分が2分の1を超えていれば、所在不明の共有者以外の共有者で軽微変更を行えることになります。

また、所在不明の共有者がいる場合、他の共有者は、地方裁判所に申立てを行い、決定を得た上で次の行為を行うことができるようになりました。

① 変更行為(農地を宅地に造成するなど)

所在不明の共有者以外の共有者全員の合意により可能

② 管理行為(共有者の中の1人を使用者と決めることなど)

所在不明の共有者以外の共有者の持分の過半数の決定により可能

⑶ 共有関係を解消しやすくする仕組み

ア 共有関係を解消する方法としては、共有者全員が1人の相手に対し、それぞれの共有持分を売却するという方法があります。

しかし、たとえ共有者であっても、他の共有者の持分を勝手に処分することはできません。共有者の中に所在不明の者がいる場合、所在不明の共有者の持分を売却することはできず、いつまでも共有関係を解消することができなくなってしまいます。

そこで、共有関係を解消しやすくするため、他の共有者は、地方裁判所に申立てを行い、持分に応じた金銭を供託した上で、裁判所の決定を得て、所在不明な共有者の持分を含めた不動産全体を第三者に譲渡できるようになりました。

イ また、共有関係を解消する方法としては、共有者の一人が他の共有者の持分を買い取るという方法もあります。

この場合であっても、持分を持っている共有者の同意がなければ持分を買い取ることはできません。

そこで、この場合にも、上記の場合と同様の方法で所在不明の共有者の持分を買い取ることができます。

以上