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コラム

持続化給付金詐欺と特殊詐欺の厳罰化に関して

黒岩 英一

投稿日

2020.10.02

投稿者

黒岩 英一

カテゴリー

その他の民事・家事事件

その他企業法務全般

新型コロナウイルスの影響を受けた事業者に国から支給される持続化給付金を詐取したとして逮捕される報道が相次いでいます。

1人だけで虚偽の申請をしているのではなく、多数の申請を、組織的に行っているような報道もあり、詐欺の広まりが懸念されます。

新型コロナウイルスの影響を受けた事業者を迅速に救済するために、申請を簡易化したことが悪用されたかたちです。

詐欺罪は、10年以下の懲役に処せられることになります(刑法246条)。窃盗罪も10年以下の懲役刑が定められていますが(刑法235条)、50万円以下の罰金刑も設定されていることからすると、詐欺罪の方が、より重い罪といっても良いかもしれません。

特に、近年は詐欺罪の厳罰化傾向を感じます。一番それを感じるのが特殊詐欺です。

特殊詐欺とは、「犯人が電話やハガキ(封書)等で親族や公共機関の職員等を名乗って被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取ったり、医療費の還付金が受け取れるなどと言ってATMを操作させ、犯人の口座に送金させる犯罪(現金等を脅し取る恐喝や隙を見てキャッシュカード等をすり替えて盗み取る詐欺盗(窃盗)を含む。)のこと」※1などとされています。

このうち、受け子や出し子と呼ばれる、組織における末端の構成員は、被害者からお金などを受け取ったり、キャッシュカードを使って下ろしたりする部分を担当します。被害者やATMなどに接触する役割であるため、よく捕まるのですが、トカゲの尻尾切りになることが多いです。反面、やること自体は単純なので、アルバイト感覚でやってしまう学生なども多数います。

受け子や出し子がその犯行によって得られる報酬は数万円から十数万円ですが、被害額は当然多額で、数百万円、場合によっては1000万円を超えることもあります。

このため、受け子や出し子は、初犯(前科がない状態)であっても、いきなり実刑となることが多くなっています。

一般的な刑事弁護の感覚からすると、初犯で報酬が数万~十数万円程度なら、被害弁償できなくても執行猶予付きの懲役刑が見込まれるのですが、特殊詐欺になると、被害弁償をしてやっと(当然、受け取った報酬額ではなく、被害者が受けた被害額です。)、執行猶予の可能性が出てきます。

これは、特殊詐欺が社会的に問題となっていることもあり、一般予防の見地(刑罰法規が存在し、実際に処罰が行われて刑罰法規が機能していることを示すことにより、犯罪を計画する者たちに対しては直接的な威嚇をなし、一般市民に対しては法への信頼(法確信)を形成する効果を与える、という考え方。※2)からの側面も強くあると思われます。

犯罪に割が良いとか悪いなどの区分けはなく、やってはいけないのですが、それにしても、特殊詐欺は、捕まるとそのまま刑務所へ行く可能性があるという、非常に重い犯罪なのです。

さて、冒頭の新型コロナウイルスの持続化給付金詐欺ですが、困っている人を迅速に救済するための制度を悪用したという悪質性と、被害額(1件あたりの被害額は100万円になると思われます。)、さらに一般予防の見地からすると、重い処罰が加えられても、おかしくはありません。場合によっては、初犯でもいきなり刑務所へ行く可能性も十分にあります。

もし、出来心で罪を犯してしまったような場合、自首をすることで、罪を軽くしてもらえる可能性があります(刑法42条)。適切な自首や、捜査機関関与後の対応などを含めて、当事務所で対応することもできますので、ご心配なことがおありなら、早めにご相談いただければと思います。

 

※1https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kurashi/tokushu/furikome/furikome.html

※2https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%9B%AE%E7%9A%84%E5%88%91%E8%AB%96