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コラム

新規ビジネス立ち上げと行政規制①(グレーゾーン対応を中心に)

投稿日

2018.05.06

投稿者

吉井 和明

カテゴリー

IT法務

その他企業法務全般

吉井です。今回は、新規ビジネス立ち上げの際、問題となりやすい行政規制、特にグレーゾーン対応についてのお話をしたいと思います。

最近、金融や医療などへのIT化のニュースが様々取り上げられています。これらの分野は、これまで、他の分野ほどにはIT化、特にインターネットを利用したサービスの提供が進んでいなかった分野ですが、その一つの理由として、法規制による障害があります。

例えば、金融分野には、銀行法や金融証券取引法、貸金業法、資金決済法等、医療分野には、医師法、医療法、医機法等、様々な業法による規制が存在し、法律だけでなく、規則やガイドラインによる細かな取り決めもあります。

取締法規違反は、刑罰を科されることにもなりますので、まずは、これに抵触しないようにしなければならず、新規事業を展開する際も、起業する際も、これらの問題がないかどうかを慎重に判断しないことには、せっかくの立ち上げのために払ったコストを無駄にすることになってしまいます。

また、これらの法律や規則、ガイドラインは、先端情報技術の登場を必ずしも予定していないものがあり、明文がないだけでなく、定説があるとはいえないものもあります。

そこで、立ち上げに際して、行政の現状の解釈を知る必要がありますが、その方法としては、当該取締りを行っている行政との協議が第一に考えられます。

この場合、適切な官庁へのアプローチが必要となるため、新規ビジネスを開始する際、取締法規に触れる可能性があるか、可能性があるとすれば、どの官庁が担当している案件かを適切に把握する必要があります。

また、これ以外の方法として、経産省のグレーゾーン解消制度(※1)を活用する方法があります。

グレーゾーン解消制度は、事業者が現行の規制の適用範囲が不明確な場合に、安心して新事業活動を行い得るよう、具体的な事業計画に即して、あらかじめ、規制の適用の有無を確認できる制度で、事業所管官庁がハブとなり、規制所管大臣へ照会し、要請した事業者に回答がなされる仕組みになっています(※2)。

このほかに、法令適用事前確認手続(日本版ノーアクションレター制度)があります。

ノーアクションレターは、確認対象が行政処分や許認可に関するものに限定されている分、グレーゾーン解消制度に比べると、範囲が狭く、また、直接監督する省庁に照会をしなければならないという特徴があります。

また、ノーアクションレターの場合、回答から原則30日以内に、照会内容、回答内容が公開されます(※3)。グレーゾーン解消制度の場合、回答内容がそのまま公表されることはありません(※4)。ノーアクションレターによる公表は、場合によっては事業にとって有害であり得ますが、逆に、公表されることにより、行政庁からの回答を知らしめることができる意味では、有利な場合もあると思われます。

次に、グレーゾーンの解消がなされなかった場合ですが、グレーゾーン解消制度を定める、産業競争力強化法は、グレーゾーン解消制度とともに、新事業特例制度(企業実証特例制度)を定めています。

企業実証特例制度は、事業者が安全性等を確保する措置を実施することを条件として、企業単位で規制の特例措置を講ずる制度です(※5)。

これについては、次のエントリーで解説したいと思います。

 

※1 http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/detail.html

※2 申請段階で、照会する法律を特定する必要があり、特定された法律に関する以外の問題は対象とならないことに注意が必要です。

※3 照会書提出時に、公表遅延の希望を申し出ることはできます。

※4 類似した複数申請があった場合に、類型化・抽象化してガイドラインなどで公表されることはあり得ます。http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/download/riyo-tebiki.pdf

※5 http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/result/release.htmlでは、グレーゾーン解消制度、企業実証特例制度の事例が挙げられています。