突然ですが、「あなたがいま利用しているサービスの利用規約、きちんと読んでいますか?」あるいは、「あなたがいま事業展開しているサービスの利用規約、ちゃんと作り込みましたか?」という質問に、自信を持ってイエスと答えられる方々はどれほどいらっしゃるでしょうか(特に前者は、殆ど居ないのではないかと思われます)。
近年、特にインターネット上で膨大な数の取引やサービス提供が行われ、そこでは必ずと言っていいほど「利用規約」(英語では”Terms of Use”等)の文字を目にします。利用規約とは、いわば契約書と同様の効果を持ち、サービス内容や提供者・利用者間の法律関係に関する規定が含まれるものです。
とはいえ、サービス利用者は、「利用規約はいいから、早く『下の方にあるボタン』をクリックしてサービスを使いたい」という気持ちが先走るものですし、また提供者に「似たようなサービスで利用規約があるから、そのまま”拝借”しよう」という発想があることも否定できません。
もっとも、これらの考え方は本当に大きなリスクを抱えたものです。弁護士としてサービス利用者・提供者の両方からサービスにまつわるトラブルについて相談を受けますが、「もう少し利用規約を読み込んで/作り込んでおけば…」という気持ちになることが、しばしばあります。では、どの点に気をつけるべきでしょうか。
まず利用者側の目線では、やはり「安易に同意しない」ことです。この点については、提供者は出来る限り自分たちに有利に利用規約を作成し、その内容で利用者から同意を受けるための工夫を様々に凝らします。さきほどの『下の方にあるボタン』も、利用規約に同意したことを表明させる方法の一つです。一番下までスクロールダウンしないとボタンを押せないという仕様もあります。これらのルールは、経済産業省「電子商取引及び情報商材等に関する準則」で詳細に定められていますが、提供者がこれらのルールに則っている限り、利用者は利用規約に同意していないと言い訳をすることも出来ず、その結果、想定しない権利の制限を受け、あるいは負担が課されるリスクがあります。
次に提供者側の目線では、まず「他所から利用規約を”拝借”しない」ことです。既存の利用規約を”拝借”して設置したところで、実際には意味のない規定のオンパレードで、本当に必要な規定が不足しており、事業を十分に守りきれないことが殆どです。そればかりか、元々のサービスで有利に作用していた規定が自分達のサービスにとっては不利に作用する規定である可能性も十分にあり得ます。類似の部分があるにせよ各サービスは唯一無二ですから、それぞれのサービスに合った利用規約を作成しなければ、的確に事業を守ることはできません。また、利用規約を作成するにしても、自分たちに都合の良い規定で固めることも避けるべきです。特に消費者向けのサービスの場合、一方的に消費者に不利な規定は、消費者契約法等の規定により無効となるリスクが生じます。このように、特に利用規約を作成する側としては、契約書作成と同様、サービスに適合した内容の利用規約を整えるべく、専門家である弁護士に相談することが不可欠だと考えます。(以上)