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コラム

法律家のための建築基準法講座1(確認申請)

投稿日

2022.11.25

投稿者

川上修

カテゴリー

その他の民事・家事事件

不動産関連

弁護士の川上修です。

今回は建築基準法の「確認申請・建築手続き」について解説します。なお、本原稿は、弁護士を中心とした裁判業務に関わる法律家を対象として、建築基準法の制度を概括的に説明したものであり、全てを網羅したものではないことにご留意ください。

 

Q確認申請は、全ての建築物を建築[1]又は大規模修繕・大規模模様替え(以下「建築等」といいます。)する場合に必要ですか?

A全ての場合に必要ではありません。

建築確認が必要となる建築物の建築等は建築基準法6条に規定されています。それによると、200㎡より広い特殊建築物(共同住宅、飲食店など不特定多数の人が利用することが想定される建築物)、三階建て以上又は500㎡以上又は最高高さが13m(軒高が9m)より高い木造建築物、2階以上で200㎡より広い木造以外の建築物(鉄筋コンクリート造や鉄骨造)の建築等は、確認申請が必要とされています(法6条1項1号ないし3号)。つまり、二階建ての木造建築物や、平屋の鉄骨造建築物などは対象外となります。

ただし、都市計画区域等内においては、全ての建築物の建築(大規模修繕、大規模模様替えは除きます)について、確認申請が必要とされています(法6条1項4号)。都市計画区域とは、都市計画法によって都道府県知事や国土交通大臣が指定するエリアのことであり、このエリア外(例えば市街化調整区域)で、建築物を建築することはあまり多くないでしょうから、建築物を建築する場合は原則として確認申請が必要と考えていも差し支えはないと思われます。

 

Q確認申請の流れについて教えてください。

A建築主(建築物を建築する人)が、建築主事(確認申請業務を行う都道府県や政令指定都市の職員)又は指定確認検査機関(国土交通大臣、都道府県知事が指定する確認実務を行う民間の機関)に対し、確認申請図書(付近見取図、配置図、各階平面図など)を提出します。そして、当該図書の法適合が認められれば、建築主事等から確認済証が交付されます。確認済証の交付を受けた以降、工事に着工することができます(法6条、6条の2)。

工事が完了したら、建築主は、建築主事又は指定確認検査機関に対し、完了報告書を提出します。そして、確認申請図書のとおりに施工されているか建築主事らの完了検査を受けて、検査済証の交付を受けます。これ以降、当該建物を使用することができるようになります(法7条、法7条の2)。

 

Q確認申請、完了検査を経ることなく建築した建築物を使用しても良いのですか?

A確認申請が必要な建築物であるにもかかわらず、確認申請や完了検査を受けていなかったとしても、建築物の所有権、占有権などの私法上の効力には直接影響はありません。したがって、そのような建築物であっても使用すること自体は可能です。

ただし、そのような建築物は、建築基準法上は安全性が担保されていない違法な建築物と扱われることになり、都道府県知事等による是正命令(除去、使用禁止など)の対象となる可能性があります(法9条)。また、建築物を処分する場合には、相手方から確認済証や検査済証の確認を求められる場合もありますので、円滑な処分が阻害される可能性があります(確認申請を経ていない建築物の売買契約も民法上は有効と考えられますが、確認申請を経ていないことを隠して売買したような場合は、後日、買主から錯誤や契約不適合責任が主張される可能性があります。)。

確認申請を経ていない建築物への対処として、実務上は、担当の行政庁と協議の上、当該行政庁に建築物としての安全性を確認してもらい、是正命令を事実上回避するというやり方が行われているようです。

なお、確認申請は建築物の工事着工後に行うことはできませんので、法的瑕疵を完全に修復することはできません。

 

[1] 建築とは、新築、改築、増築、移転の4つを指します。

 

川上 修(弁護士法人ALAW&GOODLOOP代表 北九州オフィス所長)

 

平成18年 司法試験合格(60期)

令和 4年 麻生建築&デザイン専門学校 建築(夜間)卒業

令和 4年 一級建築士学科試験、同二級建築士学科試験 合格