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コラム

立退き交渉と弁護士法

平井章悟

投稿日

2018.01.19

投稿者

平井 章悟

カテゴリー

弁護士の平井です。

これまで、お付き合いのある不動産会社の方々から何度か「弁護士以外は立ち退き業務をやれないのですか?」と質問をいただきました。

この点、弁護士法第72条は、弁護士資格を持たない者が、報酬を得る目的で、訴訟事件やその他一般の法律事件に関して代理や和解その他の法律事務を業として取り扱ってはいけないという原則を定めています。

そうすると、弁護士法違反になるかどうかは、①「法律事件」であるか否か、②法律事務を行ったといえるか否か、そして、その不動産業者が、それらの行為を、③「報酬」を得る目的で、④「業として」行ったのか、という点から判断されることになります。

判例によると、①の「法律事件」とは、「法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうもの」とされ、②の「法律事務」とは、それらの法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件について法律上の効果を発生、変更する事項の処理をいうとされている。

そして、判例は、「立退き交渉」に関する業務、すなわち、「賃貸人の代理人として、その賃借人らとの間で建物の賃貸借契約を合意解除し、当該賃借人らに建物から退去して明渡してもらうという事務をすること」が、①「法律事件」ないし②「法律事務」に該当するとしています。

そうすると、その交渉が③「報酬」を得る目的であったのか否かが問題となるところ、判例は「報酬を受けるについては、必ずしも事前に報酬支払の特約をした場合に限らず、処理の途中あるいは解決後に依頼者が謝礼を持参することが通例であることを知り、これを予期していた場合でも、報酬を得る目的があるというを妨げない」、また、「報酬を得る主観的な目的があれば足りる」旨判示していることからすれば、その判断は慎重にならざるを得ません。

そうだとすれば、やはり原則としては、賃貸物件の明渡しの交渉は弁護士が行うべきであると考えます。

当法人は、明渡し、退去・立ち退きだけでなく、その他不動産案件についても取り扱っておりますので、お気軽にご相談いただければと思います。