先日、インターネット上の書き込みに対する削除代行契約を非弁行為によるものとして無効とし、支払った代金を不当利得として、返還請求を認めた判決がありました(※1)。
この判決の内容については、原告の訴訟代理人であった中澤弁護士が、同弁護士のサイトで、既に詳しい解説をされており、そちらをお読みいただければと存じます(※2)
一般の方のために、若干説明をしますと、法律業務については、弁護士法により、弁護士又は弁護士法人でない者(非弁護士)は、法律に別段の定めがある場合を除いては、報酬を得る目的で取り扱う行為(非弁行為)を行ってはならないとされています(弁護士法72条)(※3)。
この規定の違反は、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる犯罪行為であるほか(弁護士法77条第3項)、判例上、公序良俗に反し無効とされています。本件は、このような流れで、契約が無効と判断されたものと考えられます(※4)。
なお、このような理由で契約が無効とされた場合、実際に削除がなされたかどうかは問題とならず、結果として削除ができていてもできていなくても、代金の返還を求めることが出来ます(最初から無効であると分かっていて、踏み倒し目的で契約に入ったなどの場合は別ですが。
今回は、削除代行業が、このような非弁行為にあることが認められたということであり、今後は、このような業態での業務を行っている業者が返還請求を受けることが増えてくると思われますし、このような削除代行業者からの削除に応じないコンテンツプロバイダも増えてくるものと思われます。
いずれにしろ、削除代行業者に関わることはトラブルを背負い込む結果となるだけであるため、避けたほうが良いでしょう。
ところで、このような削除代行業と同じような業態で消費者が被害を受けている分野はたくさんあります。例えば、サクラサイトの返還請求代行などもそうなのですが、これを機に、そのあたりに対してもメスを入れていけると良いのではないかと個人的には考えております。
※1 共同通信社平成29年2月20日記事(http://jp.reuters.com/article/idJP2017022001001710)
※2 中澤祐一弁護士のウェブサイト「削除.jp」(http://sakujo.jp/?p=1362)平成29年2月21日記事。なお、弁護士ドットコムでのインタビュー記事について、https://www.bengo4.com/internet/n_5735/
※3 削除代行は、それを業としてうたう会社などがおこなっていることが多いですが、弁護士以外の他士業がおこなっていることもあります。これに関しても、法律に別段の定めがある場合を除いては違法となるものであることは、注意が必要です(削除請求は、裁判になれば、財産権上の請求でない請求に係る訴えなり、その訴額は160万円とみなされますので(民事訴訟費用法4条)、簡裁訴訟代理等関係業務にあたらず、認定司法書士でも取り扱うことのできない業務となると考えられます(司法書士法3条1項6号から8号、2項、裁判所法33条1項1号))。
※4 このように記載すると、業者が受けたものを業者と提携している弁護士が処理するということであれば、問題ないのではないかと思われるかもしれませんが、その場合、定型の仕方によっては、非弁護士から事件の周旋を受けたものとして、弁護士法27条違反となる可能性があります。
裁判例紹介:インターネット上の書き込みに対する削除代行契約を無効とした事例
投稿日
2017.03.03
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