裁判所は、日本国憲法の三権分立の一翼を担う機関であり、私たちの生活にとって、非常に重要な存在です。私人間で争いが生じたとき、最後は裁判所で裁いてもらえる、ということは、社会生活の安定にとって、非常に重要なことといえます。
しかし、残念ながら、日本人の生活において、裁判所は身近な存在とは言いがたいものです。なんとなく怖い、避けたい、という意識があると思います。
私は、弁護士になって10年以上が経ち、その間ずっと裁判手続きにかかわっているため、裁判所や裁判がどういうものなのかはある程度分かっていますので、分からないから怖いということはないのですが、普段関わりのない方からすれば、悪いことをしたら裁かれる場所とか、お金を払うように命令されるかもしれない、という苦手意識があるかもしれません。
裁判所としては、国民から、裁判などについての理解を得たいという認識はあるようですが、裁判官個人による率直な情報発信がしづらい雰囲気もあり、なかなか国民の理解が広まってはいないように思います。
そんな裁判所も、実はyoutubeにチャンネルを持っています。私は、このことを最近知りました。アップロードされた動画を見ると、一番古くて10ヶ月前のようですから、そのころにアカウントが作られていたのではないかと思われます。少しでも裁判に対する国民の理解を得たいという意図からでしょうが、チャンネル登録者数は2970人(令和3年7月1日現在)で、動画再生回数も多くて3000回未満(前同時点)と、なかなか広まってはいません。真面目な動画を少数しかアップロードしていないのでやむを得ないのでしょうが、それでも、裁判所が広報活動に(多少なりとも)力を入れていることは垣間見えます。
動画配信の概要については、次の裁判所のウェブサイトから見ることができますので、興味がある方は、是非見ていただければと思います。
裁判所の仕組みや役割、調停や労働審判など、多岐にわたる制度の紹介がされていますので、もし何かお困りの際には、見ていただくことで役に立つかもしれません。
https://www.courts.go.jp/links/video/index.html
これだけですと、単なる裁判所の広報なのですが、この動画のうちの「子どものいる夫婦の離婚や面会交流に関する動画」は、家庭裁判所の待合室でずっと流れています(すべての待合室で流れているわけではありません。)。実は、この動画がずっと気になっていて、全編をしっかり見たいと思って探した結果、裁判所のyoutubeチャンネルや、この動画の情報に触れることになったのです。
調停に代理人として参加する場合、待合室に30分以上いることもあるので、この動画の音声を何度も聞くことになります。内容は、「良いこと言ってるなぁ」とは思うのですが、夫婦が(子どものためだとしても)落ち着いて話し合えるような事例は、(特に弁護士に依頼をいただく事件では)多くないので、やはり理想論としての域を出ることはありません。もちろん、理想を持つことは大事ですので、それ自体を非難するものではないことは申し添えます。
せっかくこういう動画があることを知ったので、皆さんにも知ってもらおうと思い、今回のコラムを書かせていただきました。
動画の中では、子どもの成長過程における経過なども触れられていて、普段の子どもとの関わりについても参考になるかもしれませんので、興味を持っていただけましたら、是非一度ご覧になってはいかがでしょうか。